第1章 水鏡の揺らぎ
苦い顔をしながら、その人がもう1度私に聞いた。
『兄が···ふたり。それから、兄のお嫁さんと4人で生活してます。だから、寂しいとかそう言うのはないです』
「そうか。こんな幼子が1人で生活しているのかと思ったから」
やっぱり!
『あの!さっきから何度も幼子って、』
「イ~ワちゃ~ん!やっと見つけた!」
イワちゃん?
「チッ···面倒なのが来た」
声がした方を見ると、おーいとこちらに手を振りながら走って来る人が見えた。
『お知りあい、ですか?』
「あぁ。そんな所だ」
仲がいい···って訳じゃないのかな?
返された言葉にトゲはないけど、何となく面倒なのが来たって言っていた感じが分からない。
パッと見る限り、人当たりは良さそう···なんだけど。
「イワちゃん!急にいなくなるとかヤメテ!置いてきぼりヤメテ!ぼっちにしないで!」
「うっせーなオイカワ!ぼっちじゃねぇだろ!喧しい女共がいただろが!」
仲···いいの?悪いの?
ポンポンと交わされる会話に圧倒されている中で分かった事は、私を助けてくれた人はイワという呼び名で。
後から来た人が、オイカワという呼び名。
ここは、私はどうするべき?!
このまま傍観してればいいの?
でも買い出しもまだ途中だし。
止まらない会話を聞きながら眉を寄せていると、ふと、オイカワと呼ばれる人と目が合ってしまう。
及「ところでイワちゃん?さっきから困り顔をしてるこのお嬢さんは···えっ?!イワちゃんまさか!!」
岩「何がまさかだバカタレ!コイツは変なやつに絡まれてんのを助けてやっただけだ」
及「助けた?へぇ···イワちゃんにこんな年端も行かない女の子の趣味があったなんてオレ知らなかったなぁ」
また、子供扱い?!
『あ、あの!さっきから年端も行かないとか、幼子とか言われてますけど、私はそんなに子供じゃありません!』
何度も繰り返される言葉に反論してみれば。
「「 どう見たって子供だろ?! 」」
二人息ピッタリに返された。
「人を見た目だけで判断しないでください!」
ため息を吐きながら言って、運命の人がいたらお嫁にだって行ける歳なんですからと付け加えた。
及「じゃあ、オレと結婚しちゃう?」
『お断りします』
及「即答?!」
だって初めて会った人だし、それになんかこの人、匂う。