第2章 風のざわめき
~ ケイタside ~
オータはツムグに辿り着いたんだろうか。
剣を交えながらも、ふと···そんな考えが浮かぶ。
岩「ハッ!」
「まだまだ!」
キーンと鳴り響く金属同士の音に、タダシに剣術を教えた事を思い出す。
あの頃も、ただガムシャラに剣を振り回すタダシの相手をしては···泣かせたっけな。
ー 強くなりたいんです、オレ!···せめてみんなのお荷物にならないくらいに··· ー
オレに徹底的にやられて悔し涙を流しながら言ったタダシの顔が浮かんでは···消える。
どれだけ泥に塗れても立ち上がっては剣を振り回すタダシに、オレも真剣に向き合ってやった。
なんだ、オレ。
こんな時に昔の事ばっか思い出しちまって。
今はそんな事を思い出してる場合じゃねぇだろよ。
目の前にいるのはタダシじゃねぇ。
もっと格が上の、面倒なヤツだ。
締めるとこ締めとかねぇとオレだって危ねぇぞ。
「···っ?!おっと、やっとオレに剣先が届いたか、坊や」
油断したか···左腕にチリっと感じる痛み。
軽口で笑い返しながら見れば、切り裂かれた袖から赤いシミが広がって行くのが見える。
サックリやってくれちゃって、まぁ。
黄「ケイタさん!オレも、」
「下がってろコガネ!コイツはお前のじゃねぇ···オレの獲物だ」
黄「でも今!」
「慌て過ぎだっての、お前は。こんなの大した傷じゃねぇよ、野良犬に噛まれるのと大差ねぇ」
徐々に広がる“赤”を見て顔色を変えるコガネを制し、後ろに下がらせる。
まずいな。
広がりが早ぇ···ちっとばかり場所が悪かったか?
ま、いずれにしても早いとこ決着付けねぇと···だな。
「さぁ、坊や···遊びの時間は終わりだ。優しくて親切なお兄さんが、真の戦い方を教えてやろう」
岩「···余計なお世話だ」
「遠慮すんなって。それとも、もう諦めちまってんのか?」
攻撃は最大の防御···だが、その前にコイツを揺さぶってやる。
悪ぃな坊や。
いつまでもお子様の遊びに付き合ってやれる程、オレは出来たお兄さんじゃねぇんだよ。
いつか···機会があったら。
ウチの心優し~い、オニイサマとやらに遊んで貰え。
アイツはオレ以上に···駄々っ子の付き合い方は得意だからな。
「そんじゃまぁ、お兄さんがお手本を見せてやろう」