第2章 風のざわめき
~ イワイズミside ~
「待て!!」
慧「させるか!」
叫びながら体の向きを変えると、目の前にキラリと光る物を突き立てられる。
コイツ···
慧「お前さんを行かせるワケには行かねぇんだな、これが」
「邪魔すんじゃねぇ!」
突き出された物を弾き、間合いを取る。
慧「さぁて、坊や。お兄さんが遊んであげるぜ。オレは駄々っ子の遊び相手は慣れっこだからな」
クソッ···どこまでもナメた言い方しやがって。
まぁいい。
向こうにはオイカワもカゲヤマもいる。
普段は女にデレてるオイカワだが···いざと言う時はヤル男だ。
出来るだけ早くカタをつけて、それから向かえばいい。
慧「オイオイどうした、寒いのか?ブルブル震えてんぞ?」
「黙れ···今からそのムダにうるさい口をきけなくしてやる」
慧「あ、怒っちゃった?ゴキゲン直せよ、坊や?」
無言のまま、距離を保つ。
どう、仕掛けるか。
どう、仕掛けてくるか。
ヘタに動けば、隙を与えることになりかねない。
見極めろ···経験を積んだこの自分の目で。
いつ···仕掛けるか。
···見極めろ。
互いにジッと見合ったまま、一歩も動かずに仕掛け合う。
通路を駆けてくる足音が近付いて···
黄「ケイタさんっ?!」
慧「来るな!」
仲間の声に一瞬気が逸れた···今だ!!
「はぁぁぁぁっ!!」
狙い所は1箇所のみ!
そこを目掛けて一気に剣を振り下ろす。
慧「甘いっ!!」
金属の絡む高い音が響き、あっさりと弾き返された。
「クッ···!!ならば···」
崩れた体制を上手く使い、間髪入れずに上へ下へと攻撃を繰り返す。
何度もぶつかり合い、何度も捩れる音を聞きながら、次第に息が上がってくる。
クソッ···コイツはバケモンか?!
なぜコイツは息も荒れずに平然としてやがる。
慧「なんだァ?もう降参か、おい?もうちょい、骨のあるヤツだと思ったのはオレの気のせいか?」
「···」
慧「そんじゃ、仕方ねぇ。体慣らしは···ここまでにしとくか。何事も、準備運動は大事だからな」
体、慣らしだと?
今までのは本気じゃねぇって事かよ···クソッ、ナメやがって!
怒りで上昇する体温を感じながら、相手から目を離さないように額の汗を拭った。