第2章 風のざわめき
なんだろう···
なんだか胸騒ぎがする。
風が吹き荒れてるわけじゃない。
海が荒れ始めた訳でもない。
なのに···
なんだか不安な感じが、胸を埋めていく。
月「なに?僕の許可なく、また考え事?」
フゥっと耳に息がかかる距離で囁かれ、思わず体を離す。
『ふ、ふふ普通に話しかけて下さいよ!』
まだゾワゾワする耳を押さえながら言えば、笑いを堪えるように肩を揺らしている。
月「ポチの弱点、見ィつけた」
···そんなの誰でも同じでしょ!!
『退屈しのぎにちょっかいかけるのやめて貰えます?!』
それ以上こっちに来るなと言わんばかりに立ち上がり、ツキシマさんとの距離を保つ。
月「そんなにビクつかないでよ、もっと構いたくなるじゃん?」
距離を保てば、それを詰めるように近付いて···そんな事を言う。
『だーかーらー!それ以上こっちに···?!』
ほんの一瞬の事だった。
私を掴もうと伸ばされた腕を振り払おうとした時には、視界がグルリと周り···あっという間に私の目には天井が映る。
『あの···な、何を?!』
月「何って、この状況でする事って他に何があるの?」
眼鏡の向こうでキラリと目を光らせながら言われ、息が止まる。
徐々に近づく顔に、鼓動が跳ねる。
『っ···』
見つめ続けられるのが恥ずかしくなって顔を逸らせば、押さえ込まれた腕が急に自由になった。
月「なぁんてね、ウ・ソ···プッククク···何その顔?笑えるんだけど。僕が本気でポチを襲うとでも思った?」
···思いましたよ!
ちょっと···覚悟決めそうになったじゃない!!
月「それとも?ホントは僕と···そういう事したい?」
『断固拒否します!!』
思いっきり叫ぶように返すと、今度は声をあげて笑いだした。
月「退屈しないヤツ···ほら、起きなよ」
笑いながらも差し出して来る手を借りて起き上がる。
『本当に、からかうのやめて下さ、』
最後にひと言を言いかけた時、大きな音と同時に部屋がグラリと揺れた。
『な、に?!いま凄く揺れた···』
ー 敵襲アリ!敵襲アリ!···全員直ちに配置に付け!! ー
まだグラグラと揺れる部屋に聞こえて来たのは、緊迫した声の···そんな叫びだった···