第2章 風のざわめき
~ ケイタside ~
「おいおいホンキか?」
オータとチカラから聞く戦略は、他のヤツらも困惑した様子を見せる。
桜「あぁ、そうだ。この船をセイジョーの船に当てて混乱させる。元より手放すつもりの船だし、アサヒ様からこの海に沈める事は了解を得ている」
だからって何もぶつける事はねぇだろぅが。
ヘタしたらツムグ諸共、アッチさんも沈んじまうだろ?
そんなオレの考えを読んだのか、チカラがオータに続けて話を始める。
縁「まず、真正面から当てるのは賢くはない。見たところあの船は、ここ···この辺りに衝撃を与えれば揺らぎます。なので、ここを狙いましょう」
桜「コガネ、頼むぞ」
黄「···ッス!」
桜「タダシは俺達と一緒に向こうの船に乗り移り、相手を交わしながらツムグを探す。見つけ次第···タダシはツムグを連れて退避してくれ。お前の腕があれば、それくらいは簡単だろ?」
山「···はいっ!」
なぁんだ、ちゃんとコイツらの事···分かってんじゃねぇか。
桜「それからノヤ。お前はこの船が傾く前に小舟を放ち、待機。指示はチカラから貰うこと」
西「アイアイサー!」
誰ひとり失うことなく、全員で帰る。
最後にオータはそう言って、それぞれに配置に付くように場を解散させた。
···ワリィな、オータ。
誰ひとり、失うことなくってところ。
オレはお前に約束出来ねぇよ。
お前に何かあったら、アズサが悲しむだろ?
だから。
いつもの様に切り込むのは、オレだけでいい。
あのお転婆娘を見つけたら、お前とタダシは先に船から退避させる。
オレは···あの嘘くせぇ笑顔を貼り付けた奴と、その側近と決着つけてやる。
無傷でいられるとは思ってねぇ。
だが、刺し違えてでも···
桜「ケイタ、聞いてるのか?ボンヤリするな」
「悪い、これからの事をシュミレーションしてただけだ」
桜「ケイタ。ひとつ言っておくけど、俺達が双子だって事···お前こそ忘れるなよ?」
言われちまったか。
「分かってるっての。その内お前を、カラスノで一人しかいねぇモテ男にしてやっから楽しみにしとけ?あ、ちなみに今はオレが最強イケメンな?」
こんな時に何言ってるんだとオータが呆れ顔を向ける。
こんな時だからこそ、お前はこれから一人だと言いたいんだよ。