第2章 風のざわめき
~ オータside ~
山「オータさん、見えて来ました!あれがセイジョーの船です」
タダシから報告を受け、俺も目標船を目視する。
慧「どうするオータ、暗くなるまで待つか?」
「いや、俺達は盗みに入るんじゃない。取り返しに行くんだ···正々堂々と太陽の下で動く。いつだって、そうだっただろ」
ただ、今回は分が悪いかも知れない。
俺達の人数より、遥かに向こうの方が上だ。
必要以上に武力行使をしない俺達より、恐らく···戦力も高いだろう。
なら、どうやってツムグを取り返しに?
慧「おい、オレが散々言ったこと···忘れてんじゃねーぞ?」
ケイタ?
慧「お前はオレらを頼らな過ぎなんだっての。それに、お天道様浴びながら正々堂々と行くなら···このままこの船をセイジョーの船に突っ込め」
「それは出来ない。みんなの安全の保証だって確定出来ないだろ」
慧「出来ないんじゃなくて、やるんだよ。アイツらはみんな、お前の為に生きる覚悟は括ってる」
確かに、生きる覚悟をしろと言ったのは紛れもなく俺だけど。
俺の為に、じゃなくて。
自分の為に、なんだけどね。、
慧「それに、何の戦略を考えてんだか知らねーけどオレを誰だと思ってんだ?」
自信満々な顔で胸を張るケイタを見て、思わず笑いが漏れる。
「そうだったな。だけど、こういう時は自信があり過ぎるヤツも危ないんだけどね?」
慧「ないよりイイだろ?」
まぁね、と返してケイタとタダシに全員をここに集めるように頼む。
片手をヒラヒラとさせるケイタと、それを見て苦笑を見せるタダシを部屋から出して、この部屋に残るもう一人に顔を向けた。
「チカラ。少し···君の頭脳を借りてもいいかな」
縁「お役に立てるか分かりませんが」
謙遜をするチカラに、俺が考えている事を伝えると眉を寄せた。
縁「それは···可能ではありますが、犠牲者が出ることになりますよ」
「犠牲者は、俺ひとりでいい」
縁「それは他の皆さんが納得しません!」
「いい、と言ってるんだ。それに、そう易々と犠牲になるつもりはないよ···俺を待ってる人が、いるからね」