第2章 風のざわめき
~ スガワラside ~
ー 見ぃつけた ー
ふと聞こえて来た声に体を向ければ、そこにはいるはずのない人間が壁に背中を預けていた。
及「へぇ、君たちが護衛ってわけ?」
「答える義務はない···行こう」
ニロと一緒にアズサさんを挟みながら歩き出す。
及「ふ~ん、そういう態度?だったらこっちも、不躾でも構わないよ、ね?」
及川が怪しく笑うと、いくつかの人影がオレ達を囲んだ。
及「そこの若奥様を渡して貰おうか」
ニ「渡すワケねーだろ。スガさん!」
アズサさんを壁際に寄せ、二人で前に立つ。
何があっても、アズサさんだけは守る。
それが陛下から命じられた事だからな!
及「あっそ。じゃ、お前達···軽く遊んであげちゃって?」
その言葉を合図に、剣を抜いて躙り寄る数人の男達。
出来ることなら何もなく静かに事をやり過ごしたかったけど、そんな事も言ってられない状況だな、これは。
「ニロ、お前はアズサさんを守り抜け。こっちは任せろ」
ニ「分かった···アズサちゃん、オレから離れるなよ」
ニロが一歩下がるのを背中で感じ、オレは代わりに一歩前に出た。
剣を抜き、自分の目の前に構える。
「さぁ、来い···オレが相手だ!」
攻撃は最大の防御と言っても、オレがこの場を離れたら背後の二人が丸出しになる。
だからここから離れる訳にはいかない。
相手の出方を見て···動くのはそれからでも遅くはない。
どういう出方をするのか見ているのは向こうも同じで、お互いに最初の撃を狙って睨み合う。
正直、ひとりでこの人数はキツイ。
かと言っても、ニロをアズサさんから離す訳には···せめて、あと一人いたら···
ー そこで何をしている! ー
よく聞き慣れた声がして、視線だけを動かす。
ニ「ダイチ様?!」
及「チッ···邪魔が入ったか···今日はこのままにしておいてあげる。だけど···次はないから」
オイカワがうごきだすのを見て、オレ達を囲っていたヤツらも一斉にその後に続いて走り去った。
澤「無事か?!」
「遅いよ···もうちょい早く出て来て欲しかったなぁ」
澤「所要を言いつけられて街に出たところで騒ぎをきかつけた。まさかお前達だとは思わなかったがな」
事の次第を伝え、オレ達は護衛を三人に増やし城へと向かった。