第2章 風のざわめき
~ ニロside ~
アサヒ様が何をどうお考えなのか、オレは知らない。
けど、アサヒ様が進む道に寄り添うのがオレの仕事。
だから、今の仕事はオータの嫁さんの護衛だ。
「おーい、お二人さん?イチャイチャはいつでも出来んだろっての!これから先、いっくらでもな!」
しんみりした空気を纏う二人に、わざとそんなヤジを飛ばして歩み寄る。
その方が、オレらしい···だろ?
梓「ニロさん···」
「ほらほら、オータは早く行けっつの!こんなトコにアズサちゃんをいつまでも立たせて置くつもりか?ダンナ失格だぞ?」
桜「言ってくれるな、ニロは···頼むぞ、ニロ」
「へいへい、任せとけって」
最後の抱擁をさせてやり、アズサちゃんを預かる。
オータ、お前···ぜってぇ帰って来いよ。
オレはお前の作る飯が好きなんだ。
···って、これじゃオレが変なやつみたいじゃねぇの?
ガラガラと音を立てながら碇を上げ、すぐさま船が動き出す。
「行っちまったな。ま、オレとスガさんが着いてっから心配すんなって」
寂しげな細い方を抱き寄せながら、とりま城に帰るかと声をかけた。
菅「ニロ!お前はすぐそうやって手を出す!」
ヤベ、うるせーのに見つかっちまったか。
「イイじゃないっすか、スガさんだってツムグのケツ追っかけ回してたクセに」
菅「アホか!オレは陛下の指示でそうしてたんだ!」
「ンの割には結構マジで口説いてたっぽい?」
菅「だから違うっての!」
「どうだか?」
普段と変わらない軽口を叩き、じゃれ合って見せるとアズサちゃんがやっと笑いだした。
梓「二人共···ありがとう」
どういたしまして、の言葉の代わりにオレとスガさんが笑い返す。
「あ~あ、オレがもちっと早くアズサちゃんに出会えてたらなぁ。オータはズルいよな、こんなイイオンナを奥さんにするとか」
菅「お前がオータより早く出会ってたって、不誠実の塊みたいなやつはアズサちゃんだって選ばないって」
梓「そうかも」
「ちょっと?!」
どうしようもない会話を交わしながら、三人並んで街中を歩く。
ー 見ぃつけた ー
裏路地へと続く角から不穏な声が聞こえスガさんと
前後を囲みながら振り返ると、そこにはセイジョーの船の···オイカワが立っていた。
及「へぇ、君たちが護衛ってわけ?」