第2章 風のざわめき
バタバタとなだれ込む幾つもの人影。
コレは想像以上に、興味津々組がいたもんだ。
「ちょっと···そこでなにしてんのさ?覗きなんて趣味悪いんじゃない?」
「いやぁ、まぁ···その···」
歯切れの悪い言葉と、薄気味悪い笑いを浮かべたオトコ達が居心地悪そうにしながらも部屋の中に視線を泳がす。
「言っとくけど···イワイズミさんからのお許しを貰ってるから、勝手な事したら···分かってる、よね?」
スッと剣を抜いて見せ、顔の前へと突き出してやる。
「まだそこから退かないつもり?これ以上、僕の楽しみを邪魔するつもりなら···なんの躊躇いもなく、斬るケド?」
サラリと髪の一部を払って切り落としてやると、慌てて立ち上がり腰を引く。
「す、すすすんませんっした!!」
その声を合図として、たちまち飢えたオトコ達が走り去って行く。
最後の姿が見えなくなるまでそれを見続け、また扉を閉めた。
「最初に言ったデショ?大して興味はないって」
床にへたり込む体を抱き上げ、ベッドまで運ぶ。
その瞳はまだ、僕を警戒していて。
「今のは面倒なヤツらを追い払うための芝居だよ」
『···芝居、って』
軋むベッドの隣に腰掛け、肌蹴させたボタンを閉じながら、そう···芝居だともう一度伝える。
「この船には船長以外に飢えたオオカミ達がたくさんいる。だから、念の為ってヤツ?···それとも、僕に美味しく食べられて欲しかったワケ?」
まだ小さく震える肩を抱き寄せ、耳元で囁いてみる。
『どうして、そんな事を?』
「別にどうしてってこともないけど、まぁ···強いて言うならコレの借りを返したって感じ?」
手当てされた場所に視線を促し、そういう事だからと笑う。
「キミだって、どこの馬の骨とも分からないオトコに···汚されたくはないデショ?」
正直、普段から他人に興味がない僕が···どうしてそんな事を思ったのかは分からない。
ただ···面白くないと思ったんだよ。
僕の近くで、キミが誰かに汚されていくのを見るのが、ね。