第2章 風のざわめき
~ ツキシマside ~
イワイズミさんに言われた部屋の前まで来て、ジロジロ見られ歩くのもやっと終わりか、と息をつく。
僕がオンナを連れて歩くなんてこれまでなかったから、みんな興味津々···と言った感じだ。
ホント、面倒。
「あの部屋を使うのか?···ツキシマさんがいなくなったら···」
手早く鍵を開けて中に入るように促せば、背後からクセの悪いヤツの声が聞こえてくる。
アイツは、それが例えどんな物でも必要とあらば奪うイヤなヤツだ。
「チッ···面倒なのがうろついてる。早く入って」
早くしろと言わんばかりに背中を押し入れながら自分も部屋に入り、そのまま後ろ手に扉を閉めた···ように見せかけて、ほんの少しだけ開けておく。
これなら、部屋の中で物音がすればアイツは容赦なく聞き耳を立てるだろう。
別に大して興味はない···と小さく伝えながら、忍ばせる足音に神経を尖らせる。
···来た、今だ。
わざと音が立つように壁に縫い止め、押さえ込む。
さっきまでとは違い、少し怯えるように僕を見て···瞳が揺れる。
『やめて···イヤ!!···離して!!』
そうそう、もっと騒ぎなよ?
だけど、僕は敢えて聞こえるように言葉を放つ。
「シッ···こんな時くらい、黙りなよ···」
まるで口付けを落とすかのように、ゆっくりと顔を寄せて行くと無意識なのか顔を逸らされた。
そうやって、僕を怖がりながら声を出してなよ。
小さな体を壁に押さえつけたまま、甘い香りを揺らす髪に、耳に···唇を寄せて行く。
そして首筋に息が届く頃、ピクリと肌を震えさせるのを確認して、白い肌へと僕のシルシを刻み込む。
『ンッ···』
···ちょっと、予想外の展開にするのはやめてもらえる?
なんなの、今の甘い吐息。
眉を寄せながらも扉に目を向ければ···ヤツはちゃんと扉の向こうで息を潜めている。
仕上げまでは、あと少し。
そう思って顔を向かせれば、いつの間にかその瞳を滲ませている。
「そんな顔して、僕の事を煽ってるの?ねぇ、答えなよ?」
薄く笑って唇を指先で撫でると、その横をひとしずくの涙が流れて行った。
「はぁ···仕方ないね、キミは」
小さく呟いて体を離し、シャツのボタンをいくつも緩め肌蹴させてから扉を思いっきり開けてやる。
「う、わぁっ!!」