第2章 風のざわめき
~コガネガワside ~
ケイタさんが、オレ達を全員家族だと言った。
仲間ではなくて、家族だと···
その考えに、柄にもなくひとり胸を熱くする。
家族···オレが昔失くしたものが、今はこんな近くに···あるんだ···
あの雪の日に切り捨てられたオレを拾って迎え入れてくれた···新しい生きる場所。
オレはここで、その恩返しが出来る。
「オータさん、ケイタさん···オレは覚悟を決めました。何があってもツムグさんを取り返しましょう!」
西「オレもだ、コガネ!刺し違えてもツムグさんは取り返す!」
山「オ、オレだって!」
ここにいるヤツらは、みんな同じような境遇でこの船に招き入れられたヤツばかりだ。
いつだって、オータさん達の為に全てを捨てる腹は括れてる。
一度死んだ···オレ、だから。
「オレはいつだって、この命を捨てる覚悟は出来てます!何かの時には、オレを盾に使って下さい!」
慧「アホかコガネ!お前に盾になって貰わなくてもいいっての!それに、命を捨てる覚悟なんざいらねぇんだよ。な、オータ?」
え?
オレいま結構···ガチで言ってんスけど?!
桜「そうだね、この際だから言っておくよ。タダシ、コガネ、ニシノヤ、お前達に必要な覚悟は命を捨てる事じゃない···どんな一瞬でも、生き抜く覚悟だよ」
慧「そういう事」
生き抜く、覚悟···?
桜「俺はお前達を捨て駒にするつもりで、それぞれのあの時にここへ連れて来た訳じゃない。どんな時も、しっかりと前を見て生き抜いて欲しいから連れて来たんだ」
オータさん···
桜「特にコガネ。瀕死のお前をケイタが拾って、虫の息だったのを今日まで生き繋いだっていうのに、勝手に命を捨てたら···いくら俺でも、怒るからね?」
オータさん···ものスゲー優しそうに笑ってるッスけど、目が怖いっスよ···
慧「どうするよコガネ···オータが本気で怒るとヤベーぞ?多分···チビるぞお前は」
「マジッすか?!」
叫びながらガタンっと椅子ごと後ろにひっくり返ると、ケイタさんはゲラゲラと笑いだした。
桜「ケイタ···お前はまたそうやって俺をヤバいヤツ扱いを···」
「ウソなんスか?!」
驚かさないで欲しいっス!と叫べば、オータさんは当たらずとも遠からずだと、オレを見て笑った。