第2章 風のざわめき
~ ニシノヤside ~
桜「なんて事だ···」
慧「あのバカ娘が」
山「すみません、オレがついていながら···」
タダシの話を聞いた二人が絶望の息を吐けば、タダシはそれに重ねてまた謝った。
つまりの所、タダシの話は···
オレ達がここを離れた後で、隠れていた侵入者が現れた。
で、ツムグさんはそいつのケガに気付いて手当てをするべく交換条件を出し、それが終わると自らついて行ってしまった···とか。
もとから少々、ムチャをする所はあったが···まさかこんな事になるとはオレも思ってなかったぜ。
黄「今ごろツムグさんは···」
「やめろコガネ!」
黄「腹、減らしてんじゃ···」
「そっちの心配かよ!!」
空気を読まねぇコガネの発言を止めようとすれば、見当違いの言葉を放つ。
山「オレが···オレがもっと強く言ってればこんな事にはならなかったはずなのに」
慧「タダシ、誰もお前のせいだとは思ってねぇよ」
でも!とタダシが続ければ、それをまたオータさんが遮った。
桜「とにかく、一刻も早くツムグを奪還しないと」
「でもどうやって奪還するんスか?」
ただ向こうの船に乗り込みに行くには、オレ達は人数が少な過ぎる。
相手は悪名高い海賊船···セイジョー、だからな。
桜「予定より早まってしまったけど、この船を沖に出す。そこでセイジョーと···」
慧「待てよオータ。何も考えずに闇雲に船を出すワケには行かねぇだろ!」
桜「考えてる時間なんかないだろ!···ツムグは、赤ん坊の頃から俺達が育てたきた大事な家族だから」
家族···オレにはもう、そう呼べる人間は誰一人としていない事に胸がチクリと痛む。
慧「だったら尚更、だろ。よく考えろオータ、お前の周りにはたくさんの家族がいるだろ?オレもアズサも、タダシも、コガネも、ノヤもだ」
ケイタさん?
慧「ま、今んとこアズサは留守番だけど?オレ達は全員、大事なブラックツインズの家族だ。巻き込むならオレ達を全員巻き込めよ?さっきも言っただろうが、バーカ」
桜「ケイタ···バカって言う方が、バカなんだって言葉···知ってるか?」
オレ達は全員が家族···
こんな時だけど、そんなケイタさんの言葉にオレは胸が熱くなった。
「オレも行きます!だから···連れてって下さい!」