第2章 風のざわめき
~ イワイズミside ~
アイツ···なんつー気の強さだ。
切っ先を向けるオイカワを目の前にビビりも泣きもしねぇ。
それどころか、ここで死人を出すとか啖呵切りやがった。
気の強いオンナは嫌いじゃねぇ。
···気に入った。
見掛けによらねぇとは、まさに···じゃあ、やっぱりアイツはブラックツインズの?
だったら尚更、ツキシマに手柄をやらねぇとな。
とりあえずこの場を冷めさせ、後でツキシマには金を渡して街医者に行かせりゃいい。
オイカワの隠し金貨なら、隠し場所は知ってるしな。
どうせ女か酒にしか使わねぇんだから、問題はねぇだろ。
「おい、お前。その物騒なモノから手を離せ···オイカワもだ」
及「イワちゃん?」
「いいからオイカワもしまえ。ここはオレに預けろ」
及「ハイハイ、わっかりました。あ~あ、つまんないの···街で女の子でも捕まえていろいろ晴らしてくる」
···またオンナかよ。
まるでガキのように頬を膨らませたまま足早にオイカワが出掛けていく。
「悪かったな、嫌な思いさせてよ」
ドアを閉めながら言えば、そいつはただ黙って首を振った。
月「オイカワさんの機嫌を損ねるとか、もうこの船からは帰れないよ」
『···でも、さっきのは私が許せないと思ったからそうしただけだし。誰かを守るためには必要な事だったから。それより、痛む?』
オンナが押さえた箇所を解放すると、俺からも分かるほどに赤くシミが広がっていた。
『ダメか···せっかく止まってたのに、もう一度やり直すね?ちょっとだけガマンしてて』
岩「おい、お前···確か名前は、ツムグだったか?」
店で呼ばれていた名前を思い出し、声をかける。
『···お叱りなら後にして下さい。今はとにかく、この人の止血をします』
そう言い放つと、ツムグは躊躇うことなくスカートの裾を引き裂いた。
月「ちょっと!」
岩「お、おい!」
『ちょっと長いと思ってたから、これ位が動き安くてちょうどいいかも。だから気にしないで?』
どんだけ肝の強いヤツなんだ。
ここにはオトコしかいないってのによ。
ったく、オイカワがいなくてよかったぜ···
手際よく手当をしていく様子を見ながらも、切り裂かれた裾から覗く白い肌から···目を逸らした。