第2章 風のざわめき
~ オイカワside ~
「お疲れさ~ん···って、ちゃんとお仕事して来たんだね!」
月「···」
労ってあげてんのに、その嫌そうな表情は堪んないね。
岩「やはりオレが読んだとおりだったな」
「···みたいだね。でもまさか、キミがあの名立たる船の乗組員だとは思わなかったけどね」
ホント、びっくりちゃんだよ。
ブラックツインズには女海賊も乗っているとは聞いていたが、それがこんな小さな女の子···だったとは。
「キミにはいろいろ聞かなきゃいけない事がある。オレとおしゃべりの時間を楽しもうか」
『私には、あなたとその時間を共有する暇はありません』
おーっと?
以外と強気な感じ?
うんうん、いいね。
そういう類の女の子を口説くのは、オレとしては楽しい時間だからね。
「オレはあると言ってるんだ···分かってくれるかな?」
目線だけでツキシマに促せば、その意図を汲んで椅子をひく。
「···どうぞ、お座り下さいお客人」
ジッと見据えて言うと、困惑しながらも静々と腰を下ろすのを見て薄く笑って見せた。
その困りながらもオレを見る目、ゾクゾクするよ。
「さて、オレは女の子を手荒くもてなすのは趣味じゃない。だから、単刀直入に言うよ···あの船の船長はどっち?」
あの店にいたのは同じ顔の男。
つまりは、そのうちのどちらかが頭を成しているハズだ。
···ブラックツインズ。
同じ顔をした、悪魔。
他のは海賊船のヤツらは、みんな口を揃えてそう言っていたからね。
『知りません』
へぇ~···そういう手段に来たか。
『あなた方が何を知りたいのかは分かりませんけど、私は何も知りません。極々普通の、ただの一般人です』
「でも、あの店にいた時は同じ顔をした男達と随分仲良さそうにしていたじゃないか」
『店主と、それから従業員だからです。それ以上も、それ以下もありません』
ふぅ~ん?
なかなかの強がりさんだね。
「ただの従業員だと言うなら、なぜキミは船にいた?ツキシマが連れて来たって事は、船にいたからだろう?それとも···ツキシマはお昼ご飯でも食べに店に行って、口説いて来たのかな?」
ツキシマは隠そうとしてるけど、ケガをしている事なんてオレにはバレバレだよ。
仕方ない、口を割らないなら···ツキシマにちょっと痛い思いをさせよう。