第2章 風のざわめき
『あなたは!!』
予想もしていなかった人物の登場にハッと息を飲む。
『どうして···』
あの日、あの四人組の中にいたひとり。
月「イワイズミさんに言われた通り、あの店を見張っとけばいつか動き出すって思ったんだよね。何も気付かずに僕をここまで案内してくれるとか」
やっぱり、私が後をつけられてたんだ···
山「ツムグさん!こっちへ!!」
タダシ君が棒立ちになる私の腕を引き、自分の後ろへと隠す。
月「おっと、勝手に動かないでくれない?じゃないと、急に動かれてビックリした僕の腕が、キミをキズつけてしまうかもよ?」
剣の切っ先をこちらに向けたまま、ニヤリと笑う。
『抵抗はしない。だから、その剣を···もしかして、ケガ···してるの?』
伸ばされた腕の途中から、ポタリ、またポタリと赤い滴が床に落ちていく。
その出どころを目で辿って見れば、上腕付近の服が真っ赤に染まっていた。
月「別にたいしたケガじゃない」
『見せて。それだけ服が染まっていたら出血だってかなりの、』
月「うるさい。キミ、自分の立場···分かってないデショ?」
言葉では強気でいるように見えるけど、その額には汗が滲んでいる。
せめて応急処置くらいしないと、このままじゃ···
『···分かった。交換条件しましょう』
月「は?」
『そのケガは放っては置けないから手当てさせて?その代わり、それが終わったら···そっちの条件を聞く』
山「ダメだよ、ツムグさん!」
タダシ君がそう叫ぶも、私は首を横に振った。
多分この人は、あのオイカワって人に私を人質に連れて来い···とか、言われてるんだと思う。
それで済むなら、目の前でこの人に死なれるより断然マシだから。
お互いに向かい合ったまま、暫く視線を交わし合う。
月「だったら···早く」
『分かった。タダシ君、悪いけど手当に必要な物を用意して貰える?』
山「でも!」
『いいから早く!この責任は私が全部引き受けるから!』
山「···はい」
タダシ君がバタバタと準備をする横で、イスを引き座らせる。
月「言っとくけど、妙なマネしたら」
『黙ってて。私は兄様みたいに優しい手当ては上手じゃないの。ガマンできないくらい痛かったら、内緒にしてあげるから泣いてもいいよ?』
月「バカにしてんの?泣くわけ、っ···」