第2章 風のざわめき
オータ兄様···まさか?!
『や···やめてオータ兄様!!』
山「わっ···」
静まり返る部屋に響く銃の音と同時に、ありったけの勇気でタダシ君を突き飛ばした。
オータ兄様が撃ち放った銃弾は窓ガラスを豪快に砕き、辺り一面にその欠片が舞った。
ー クッ··· ー
小さく呻く声が聞こえ目をやれば、割れたガラスの向こうに走り去る人影が見えた。
桜「逃がすかっ!···ケイタ!」
慧「はいよ!」
ケイタ兄様もいたの?!
なに···何が起きてるの···?
桜「ニシノヤ!コガネ!二人とも追うぞ!」
「「 アイアイサー! 」」
桜「タダシ、ツムグを頼む」
山「はいっ!」
タダシ君と私を残して、慌ただしくみんなが駆けて行く。
山「···侵入者がいたんだよ」
床に座り込んだままのタダシ君が、壁に背中を預けて私に言った。
『侵入者?』
山「うん···貯蔵してる食材を取りに行った時に、鍵を閉めたはずの扉が開いてて。よく見たら鍵は壊されてた。何とかして緊急事態をオータさんに連絡しなきゃって、日に一度連絡する方法を続けて二度やったんだ」
同じ連絡方法を二回。
それは確かに、私達が仲間に緊急事態を知らせる方法。
だからオータ兄様は、ケイタ兄様と一緒にここに来たんだ。
···あれ?
『ねぇタダシ君?オータ兄様は私がここにいるのを見て···その、怒ってた···よね?』
だってあの時、オータ兄様が扉を開けた時···言葉を詰まらせてたから。
山「さすがに緊急事態の連絡方法だけじゃ、そこまでは教えられないから」
···ですよね。
ってことは、やっぱり怒ってた事は怒ってたんだよね。
かなり厳しいお説教を覚悟しておかなければ。
それより、侵入者···
『前にもこういう事って、あったりした?』
山「ないよ?今回が初めて。だからオレもちょっとビックリしたんだよね」
『そう···なんだ』
今まで誰にもバレずにいたのに、なぜ···今日?
ただの偶然?
それとも···
『もしかして私···誰かに後をつけられてた···?』
ー ご名答。案外バカじゃなかったんだ? ー
キィ···と扉が開き、人の気配がした。
···誰?!
大きく音を鳴らす胸を押さえながら振り返る。
そこに立っていたのは···