第1章 水鏡の揺らぎ
『みたいな?じゃありませんよ···前みたいにまた悪い人達に捕まって幽閉されても知りませんからね?』
全くもう、とため息混じりに言ってみる。
旭「その時はまた、オータ達が助けてくれるんだろ?」
···王様。
あの時あれだけ兄様達が言い聞かせたのに、ちっとも懲りてない。
1年前、ふと旅の途中で立ち寄った港町でおかしな噂を耳にした。
ー この国の王様が攫われて、今はどこにいるんだか ー
ー いなくなった王様の代わりをしているヤツは、とんでもない悪いやつだ ー
それを聞いた兄様達が、昔ここを訪れた時には豊かな国だったはずなのに、こうも荒んだ街に変わってしまったのは王様が行方不明になっているせいなのか···と話していたのを覚えている。
旭「それに、正体を隠しているのはオレだけじゃないだろ?ん?」
『なっ···』
桜「アサヒさん?それはお互いに秘密っていうお約束でしたよね?」
『兄様!』
旭「あはは、そうだったねオータ」
料理を運んで来たオータ兄様がニコリと言えば、アサヒ様も同じように笑い頷いた。
···アサヒ様が身分を隠してお忍びでここへ訪れるように、私達にも···街のみんなには明かせない秘密がある。
それは私達4人が、いわゆる、元海賊···ってこと。
海賊っていっても、様々で。
悪い人もたくさんいれば、逆に悪い人たちを懲らしめて報奨金を頂きながら旅をする···という海賊達もいて。
私達は、後者。
悪い事をして金品を奪って行く海賊達をやっつけて、奪われた金品を元の場所に返して···また海へと旅立つ。
そんな暮らしをしていた。
そんな時に立ち寄った港町が、ここ、カラスノ。
そして耳にした噂話。
オータ兄様がアズサちゃんと結婚を決めた事で、その海賊生活を終わりにして、船ではなく、地に足をつけた新しい生活をするのに居場所を探している途中だったんだよね。
そして。
この荒んでしまっていたカラスノを見て、ケイタ兄様が。
慧「オータ、最後にひと仕事しようぜ?」
って持ちかけて。
結果的に幽閉されていたアサヒ様を救い出し、報奨金の代わりにカラスノで生活出来る場所を与えて貰った。
までは、いいんだけど。
なぜかアサヒ様は、頻繁にお城を抜け出しお食事処ツインズへと現れる。
···ちょっとオイタがすぎるニロさんをお供につけて。