第1章 水鏡の揺らぎ
ここは、大きな国の小さな港町、カラスノ。
その港町で、私たちは···
桜「ケイタ、料理上がってるから運んで」
慧「おぅよ!オータ、いつもながら仕上げんの早ぇーな」
梓「いらっしゃいませ!空いてる席にどうぞ!オータ、5名様よ!」
桜「了解、アズサ」
『オータ兄様、オムライス2つお願い!あとドリンクも!』
双子のオータ兄様とケイタ兄様、それからオータ兄様のお嫁さんのアズサちゃんと一緒に、お食事処〖 ツインズ 〗を切り盛りしながら生活してる。
ここでの暮らしは質素だけれど、でも···毎日が忙しくても楽しくて。
それに、この前ふたりから打ち明けられた嬉しいお知らせ。
春になったら、私達に新しい家族が増えるってこと。
私はそれが、とにかく待ち遠しくて!
ワクワクする気持ちを隠せないまま、退店したテーブルを片付ける。
だって···だって赤ちゃんだよ!
想像するだけでテンション上がる!
『ぷにぷにで、フワフワで···』
まだ来ぬ新しい家族の感触に、心がほんわりとしてくる。
「ぷにぷにの、フワフワねぇ···どっちかっつーと、ツーちゃんはプリプリって感じ?」
『ひゃぁぁぁぁ!!』
ゾワッと鳥肌が立ち、思わず悲鳴を上げてしまう。
『に、ニロさん?!毎回毎回言いますけど!急に私のお尻撫で回すのやめて下さい!!』
ニ「ふぅ~ん?じゃ、今から触りますよ~?って先に断ればいいワケね?」
『そういう問題じゃありません!』
スっと伸びて来るニロさんの手をピシャリと払い除け、数歩下がる。
だいたい、なんで今ここにニロさんがいるの!
いつも王様の側にいて、王様をお守りしなきゃいけないお仕事なんじゃないの?!
旭「ニロ、あんまりツムグさんを困らせるんじゃない」
『ホントですよ···って。ええっ?!王さ、ムグッ···』
ニ「大声でその呼び方すんな!お忍びなんだから」
私が驚きながら顔を見れば、ニコニコとしながらこの国を統治する王様であるアサヒ様が、しぃーっと人差し指を口元に運ぶ。
『な、なにしてるんですか!』
小声でありながらも、一国の王であるアサヒ様に詰め寄る。
旭「いやぁ···どうも仕事が溜まってしまって息が詰まりそうだったから···大臣のダイチは小言ばかり言うし。ちょっと、息抜き?みたいな?」