第2章 風のざわめき
~ コガネガワside ~
また、ノヤっさんに怒られた。
なんでオレは、いつもヤル気と気合いが空回りしちまうんだろう。
オレは元々、山賊の類の下っ端で頭領に言われるままに働いてた。
盗みとか、そういうのは向いてなかったらしく。
主に頭領の身の回りの世話や、馬の世話とか、雑用係をしていた。
なのに、いざ追われる身になったら頭領は···オレを真っ先に斬り捨てた。
正面から胸をザックリ斬られて、その場で捨てられた。
古びた港町の冬、酒場の裏路地だった。
降り積もった雪がジワジワと赤く染みていき、それと同時に視界が暗くなって行った。
子供の頃に頭領達に攫われて、今日まで生きてきたのに···ここで終わり、か。
自分の上に容赦なく降り続く雪をぼんやりと眺めながら、小さく笑った···その時。
ー おいお前!しっかりしろ!···まだ息はあるな。オータ!ちょっと来てくれ!早く!! ー
その声を最期に、真っ暗な世界にオレは落ちて行った。
傷の痛みで目が覚めた時、オレは見たことのない部屋にいた。
「オレ···生きてる···?」
ポツリと言って、見知らぬ天井に手を伸ばした。
梓「大丈夫、アナタはちゃんと生きてるわ」
そばにいた人に微笑まれて···女神様かと思った。
オレ、ほんとに生きてるのか?
梓「ちょっと待っててね、優秀な船医を呼んでくるから」
船医?
問い返そうとすると、クルリと背中を向けて部屋を出て行ってしまう。
かと思えば同じ顔をした二人と戻って来て、驚きのあまりに飛び起きる。
「お、同じ顔が二人?!···痛っっってぇ!!」
桜「こらこら、まだ起き上がったりしたらダメだ。傷が開いたら大変だ」
慧「あんだけザックリ斬られて死なずに済むとか、さすがオータだな」
···この声は確か!
桜「俺じゃないよ、彼の生命力のおかげだ」
慧「それもそうか。お前、名前は?」
同じ顔の、似たような声の主に名前を聞かれて、ついでだから傷の消毒をしようと手当てをされる。
その中で色々な話をして、帰る場所がない事を告げると生きる場所が見つかるまでここにいればいいと言われた。
しばらく悩み、迷った末に···オレはこの船を、新しく生きる場所に決めた。
救われたこの命、オータさんとケイタさんの為に生きようと決めた。