第2章 風のざわめき
~ ニシノヤside ~
「おいコガネ!お前何回言ったら分かるんだ!そこはそれじゃねだろ!コッチ!この板使うんだよ!」
黄「は、はい!スンマセンっ!」
ったく、しょうがねぇヤツだなコガネは。
長い船旅の途中で、死にかけていたコガネをケイタさんが拾い···新しく生きる場所を見つけるまでオータさんが仲間に招き入れた。
ま、オレもタダシも似たような境遇でオータさんに拾われたから、そこん所は別にいいとして。
オレとは違ってガタイのいいヤツではあるけど、なんせ不器用にも程があるんだよっ。
ヤル気と気合いはバッチリなのに、如何せん···修繕に関しては二度手間この上ねぇ。
いつ何が起きてもスグに船を出せるように、あちこちを手直ししてるっつーのに。
「コガネ、そこはオレがやるからお前はこの板を磨いとけ···」
黄「アイアイサー!」
ホント、気合いと返事は超一流だな。
···オレの家系は代々船大工だった。
ある日、港に見知らぬ派手な旗を掲げた船がやって来て船の修理を頼まれた。
だが···その修理が終わった時。
その船のヤツらは···オレの家族を巻き込みながら村に火を放ちやがった。
一人単独でヤツらの船に潜り込み、隙を狙って敵を取ろうとするも逆に捕まっちまって。
拷問紛いの仕打ちをした後に、海に放り出された。
あぁ···オレも父さん達の所に行くのか···
そう思いながら、自分が沈んでいく泡に手を伸ばし意識を手放した。
どれくらいそうなってたのか知らねぇ。
だけど、ふと目が覚めた時···オレは見知らぬ船の一室にいた。
「ここ、は···」
『あっ···目が覚めた?ちょっと待ってて、兄様を呼んでくるから』
ベッドの傍らにいた女が、バタバタと慌てながら部屋から出て行った。
それからスグに妙に物腰の柔けぇ男が来て、オレの様子をあちこち診察した。
桜「キミが海に投げ入れられるところを弟が見つけてね···間に合って良かったよ。そうた、名前は?」
「···ニシノヤ」
それからは自然な形で今までの成り行きを話し、一度死んだと思って、この船で生き直さないか?と招かれた。
一度は海の中で諦めたこのオレの命。
だから、オレはこの男に一生着いて行こうと···誓ったんだ。
なのに···なぜ、オータさんはあんな話を···