第1章 水鏡の揺らぎ
~ツキシマside~
「じゃあね」
オイカワ船長から言われて、ここ数日ずっと人探しの為の情報収集に街を歩く。
これまでに沢山の人に聞いて歩いてるケド、特に役立つ情報は入って来ない。
あの人はいったい、なんの為に人探しなんて始めたんだ?
気まぐれ?
思いつき?
どっちにしても、僕には面倒な事この上ない。
欠伸をひとつ噛み殺しながら、とりあえず一度船に戻るかと港へ足を向け歩き出す。
「おい、ツキシマ」
背後から声をかけられ振り返れば、僕と同じ仕事を押し付けられて、やる気なさげに船から出て行ったクニミがいた。
「これはこれは、諜報部員のクニミじゃないか。お勤めご苦労サマ。いまお戻りで?」
国「お前こそ、姿を見ないと思ったら···あんな宿屋でサボってたのか?」
チッ···見てたのかよ。
「失礼だなぁ、僕は別にサボってたんじゃない。それに、あの職業のオンナ達は意外と情報を持ってるからね。それを利用しただけの話」
国「だからって、オンナを買うとか」
ふ~ん、気になってるのはソッチ?
「オンナを買ったワケじゃない。小銭を使って話し相手になって貰ったダケさ。だから、僕のカラダは清いままだけど?」
国「どうだか」
僕が危険を犯してまでオンナを買うワケないだろ、しかもあんな年増のね。
昨夜はホントに話だけで終わったんだから。
国「っていうか、着いてくんなよ」
別に仲良く歩いてるワケじゃない。
行く方向が同じなだけ。
「じゃ、クニミが道変えたら?僕はオイカワさんのとこに行くんだから、さ?」
及「は~い、ケンカしない!オイカワさんはここですよ~?」
「「船長?!」」
岩「お前ら、仲がいいんだか悪いんだか」
ポンッと肩を叩かれ振り返れば、そこにはこれから向かおうとしていた人物が二人揃ってニヤリとしていた。
及「で?どうだったの?」
国「それなんですが···」
表情から見て、クニミもそれらしい情報は掴んでいないと見えた。
岩「おい。とりあえず飯でも食いながらでいいだろ、俺は腹減ってんだ」
及「そうでした。さっき街の人に、毎日でも食べたくなる食事を出しているって言う店を教えて貰ったんだよ。二人も一緒に行こう!可愛い女の子もいるんだって!」
結局そこかよ。
しかし、断り切れるワケもなく···仕方なく着いて行くことにした。