第3章 海原の煌めきをアナタと···
慧「へぇ···そりゃ良かったな、っと」
石段から海辺に降り立ち、ケイタ兄様は···驚きと喜びで言葉を詰まらせるみんなの顔を順に見回していく。
慧「みんな···変わんねぇなぁ···って事で。ただいま···」
変わんないのはケイタ兄様の方だよと言いかけて、ケイタ兄様に歩み寄るオータ兄様の姿を見守った。
誰よりもずっと心配してたオータ兄様が、一歩ずつケイタ兄様へと近づいて行く。
その表所は固くもあり、だけど···どこか穏やかでもあり。
桜「おかえり、ケイタ···こんな時間まで、どこで油を売ってたんだ?夕飯までには帰る約束、忘れたのか?」
慧「そうだったな」
桜「約束を破った罰として···」
慧「···罰として?」
そこにいる誰もがオータ兄様たちの様子を伺っている。
桜「罰として···お前にはもう一度、生きる覚悟をして貰う。だからもう、あんな無茶はするな···」
慧「···へぃへぃ」
涙が、止まらなかった。
だって···あまりにもケイタ兄様が前と変わらなかったから。
慧「お前の泣き虫も変わってねぇな、ツムグ」
涙を押さえて俯いていると、ふと目の前に影が落ちる。
『泣いてなんか···』
慧「嘘つけ。めちゃくちゃ泣いてんじゃねぇか、あ?···痛っ!」
ト「ママをいじめるな!!」
慧「なんだこのチビ助は?そんなモン振り回したら危ねぇだろ···ん?コイツ···どこかで見たような顔だな···確か···」
トワの顔を覗くように膝をついて、その手を頭に乗せようとした時。
月「ウチの子が、なにか?」
スっと前に出て、ケイ君がトワを背中に隠した。
慧「お前は···そうか···そうだったのか···」
月「どうも」
ケイタ兄様がケイ君とトワの顔を何度も見比べては、嬉しそうに笑った。
リ「ねぇオジサン!オジサン剣術強い?」
慧「おっ、オジサン?!」
桜「またリンネは···」
慧「···あの時の子供か?」
リンネはアズサちゃんにいろいろそっくりで、それを見てケイタ兄様はすぐに分かったらしい。
慧「剣術って···オータ、お前こんなチビッ子になに教えてんだ?」
『違うよケイタ兄様。リンネのお師匠様は、ほら···あっち』
こっそり指させば、その先でタダシ君がわんわんと大泣きしている。
慧「師匠なのに、泣きすぎだろが」