第3章 海原の煌めきをアナタと···
新しい家族を迎えてから5年の月日が流れ···
私達の小さな小さな宝物はすくすくと育ち、いまは海辺を駆け回るほど元気な男の子に成長してくれた。
···けどね。
ちょっと困ったところがあって。
ト「うわ~ん!!!ママ~!またリンネが意地悪する~!!」
リ「意地悪してないもん!トワがすぐ泣くだけだもん!」
···こんな感じの毎日を過ごしてる。
『トワ、男の子なんだからすぐ泣いちゃダメでしょ?』
ト「だってリンネが···グズッ」
桜「リンネもトワよりお姉ちゃんなんだから···」
リ「だってトワが剣術ヘタクソなんだもん」
お店の仕込みが終わってからの時間、私達はツインズのメンバーみんなで同じ時間を共有するようにしていた。
リンネは特に、タダシ君に剣術を教わるのが楽しいようで、トワを相手にレプリカの剣を振り回しては毎度のように泣かせている。
月「トワ、今のうちにたくさん泣けばいいよ。男の子は大人になったら簡単には泣けないんだからさ」
『あれあれ?私は大人のケイ君の涙を見たことあるけどなぁ?』
月「···うるさいよ」
とにかく毎日が忙しくて、賑やかで、夕方のお店を開けるまでの団欒が···幸せのひとつで。
ただ···ここにいる誰もが、ここにいないひとりを思いながら···だけど。
ケイタ兄様···あの日からずっと行方を探していても、未だに情報すら掴めない。
諦めかけた事も、正直···あった。
だけど、やっぱり。
いつか帰って来てくれるなら、リンネもトワも···抱きしめて欲しい。
なんて、初めて会う同士だから···きっとビックリしちゃうよね。
「なんだ?その小さいのは。やたら元気なチビ共だな、おい」
そうそう、そう言ってニヤリと笑って···
···え?
どこからともなく聞こえる声に、その場にいたみんなが振り返る。
『ウソ···』
桜「···ケイ、タ」
あれだけ探していても何も掴めなかった人が···いま、みんなの目の前に···
少し伸びた髪を束ね、日に焼けた肌を大いに晒し、何もなかったかのように海辺に降りる石段の上に立っている。
慧「よう。みんなここで佇んでるって事は、遂にツインズは閉店しちまったか?敏腕店主もこれまでか?って」
桜「残念だけど、前よりも繁盛してるよ」