第3章 海原の煌めきをアナタと···
『大泣きしてるけど、あの頃よりずっと···タダシ君は強くなってるよ?きっともう、タダシ君は誰かさんより強いかも』
慧「なにっ?!それは一大事だ!···おいタダシ、ちょっと手合わせしろ!」
山「は···はいっ!!」
グイッと顔を拭いてタダシ君が顔を上げる。
その表情はいつもよりも輝いていて···
リ「オジサン、タダシより強いの?」
慧「だから、そのオジサンってのやめろ。オレはお前の父ちゃんと同じ歳だ」
リ「ねぇ、強い?!タダシより強い?!」
慧「聞いちゃいねぇなコイツ···あぁ、オレはタダシよりメチャクチャ強いぜ?タダシに剣術教えたのはオレだからな」
妙に胸を張るケイタ兄様を見て、リンネが嬉しそうな顔を見せた。
リ「タダシより強いとか、カッコイイ···」
慧「おっと?オレに惚れるとネズミ花火が炸裂するぜ?」
桜「ネズミ花火とか、落ち着きないあたりがそっくりだな。ついでに言えばリンネはお前にはやらないよ」
慧「欲しけりゃオータを倒してからにしろってか?」
桜「お前に負ける気は···まったくしないけどね」
離れた場所でワァワァと歓声が上がる。
いつもと同じ、いつもと変わらぬメンバーで···剣術大会が始まって盛り上がりを見せていた。
慧「っしゃ!またオレの勝ちだな」
山「まだまだ!···もう1回!!」
月「ホント···あの人バカなの?」
『いいんじゃない?1人くらい変わり者がいる方が毎日楽しいかもよ?』
月「ハァ···あのテンション、面倒」
剣術大会に混ざらない私達は、流木に腰掛けてその様子を眺めてる。
いつか···いつの日かケイ君が混ざれるようになったら。
その時は私も、手合わせを願い出ようかと小さく笑う。
でも、いまは。
いま、この時間だけは···
夕焼けに染まるこの場所で、ずっと感じていたい。
海原の煌めきを、アナタと···
~ Fin ~