第3章 海原の煌めきをアナタと···
~ ツキシマ side ~
やっと泣き声を上げた赤ん坊を、不思議な気持ちで見ていた。
これが、命の繋がり···
ふとツムグを見れば、汗と涙でぐちゃぐちゃなったままで、それでも安堵の表情を赤ん坊に向けていた。
そして今、僕は部屋の外に出されて···扉一枚向こうの様子に耳を傾けながら待っている。
梓「おっ待たせ~ツッキーパパ!」
「ちょっと、その呼び方···」
やけに元気よくドアか開けられたと思えば、そこから上機で顔を出すアズサさんが僕を呼ぶ。
梓「いいからいいから、ほら早く」
僕が部屋に入るのを待ちきれないかのように腕を引いて、そのまま中まで連れていかれる。
梓「はい、ご対面!」
ご対面って、赤ん坊にもツムグにもさっき会ってるのに。
そんな小さな悪態を抱えながらベッドに目を向けて思わず息を飲んだ。
とても愛おしそうに赤ん坊を抱きかかえて微笑む姿。
それはまるで、僕には眩しすぎる程の眩さで。
それまでに見ていた彼女の姿とは違い、これが母親になったツムグの姿なのだと···胸が熱くなった。
梓「なにをボッーとしてるのよ?ほら、早く抱っこしてあげなさいって、ツッキーパパ?」
「だから、呼び方···」
照れない照れない!と笑いながらアズサさんが僕の背中をグイグイと押してイスに座らせた。
『可愛いでしょう?あんなに大変で、あんなに痛かったのに···こうして抱いていると、あの痛かったのがウソみたい···』
そう言って赤ん坊に頬を擦り寄せるツムグを見て、僕も顔が緩むのが自覚出来た。
『ね···抱っこしてみて?凄ーくふわふわで、暖かいの』
抱っこ?
でも、僕の腕はまだ···赤ん坊を抱けるほど、回復はしていないのに。
梓「大丈夫よ、ツッキー。腕の事は何も心配いらないわよ?···ツムグちゃん、トワくん預かるわよ?」
そう言ってアズサさんが一度赤ん坊を抱き上げ、そっと僕の腕に預けた。
梓「こうやって、ここに赤ちゃんの首を乗せて···ほら、大丈夫でしょう?」
ふにゃふにゃとして、柔らかくて···暖かい。
これが僕と血を分けた、新しい命。
梓「確かにツッキーにはまだ、少しだけハンデかあるかも知れない。けどね、大事なのは···ココよ?」
指先で僕の胸をつついてアズサさんが微笑む。