第3章 海原の煌めきをアナタと···
桜「先生、水は吐きましたか?!」
産まれたばかりなのにクタリとして動かない赤ちゃんを抱き上げ、オータ兄様がその体をさする。
「水はすぐ吐いた···が、もしかしたらまだ残っているのかも知れない」
桜「分かりました···吐かせましょう」
涙で滲む視界の向こうで、オータ兄様が聴診器を当てながら小さな体を摩ったり、腕の中でうつ伏せにしたりする姿が見える。
月「···大丈夫、あの子は僕達の子だから」
そう言って私に触れる手は···微かに震えていて。
桜「アズサ。ツムグに··············して。····だから、·········だ」
梓「···分かった」
オータ兄様がアズサちゃんに何を言ったのか聞き取れなかったけど、直後···ドクターが兄様のところに移動して、アズサちゃんが私の顔の前にタオルを広げて目隠しをした。
「オータ。頼むぞ」
桜「···分かってます」
「あぁ。躊躇わずにやってくれ」
タオルの向こう側で幾つかの言葉を交わしのが聞こえる。
これから何が行われるのか分からずアズサちゃんの顔を見上げれば、アズサちゃんはただ···黙って瞼を伏せた。
桜「行きますよ先生」
オータ兄様の声を最後に、沈黙が訪れる。
その場にいる誰もが、息を潜めた瞬間···床に少しの水が跳ねる音がして。
誰もが待ち焦がれた···小さな泣き声が上がった···