第3章 海原の煌めきをアナタと···
『なに···怖い···』
なんなの···これ···
ジワジワと広がっていくシミから目が離せないまま、痛みに耐える。
ドクターに教わった通り、ゆっくり息を吐いても痛みが和らぐ感じもない。
月「···!!オータさん!ツムグが!!」
ケイくんの声にオータ兄様が側に来て状態を確認すると、いつになく真剣な表情を見せた。
桜「ツムグ、大丈夫。これはもうすぐ産まれるっていう証だから」
そっと頭を撫でられ、もうすぐ産まれると言われて···不安と期待に心が震えた。
桜「ツキシマ、俺達は少し部屋を出よう。あとはお医者様と、それからアズサに託す」
月「でも!」
桜「俺達がここにいても、出来ることはない。医術の心得があっても、俺に出来ることが少ないから。それに、ツムグの為にも一度出よう」
オータ兄様に宥められるようにしながら、ケイくんが側を離れた。
桜「アズサ、俺達はドアの外にはいるから何かあったら···」
梓「わかった。すぐ呼ぶ」
本当は、ずっと側にいて欲しいと思う。
でも、これ以上苦しむ姿を見られたくない気持ちもあって···言えない。
梓「ツムグちゃん、大丈夫。ここから多分···今までよりもずっとずっと痛みが増してくるけど、苦しいのはツムグちゃんだけじゃないから。お腹の中にいる赤ちゃんも、同じだけ苦しみながら産まれてくるんだって」
『アズサちゃんも···痛かった?』
弱々しく言えば、アズサちゃんはニッコリと笑って···
梓「すっっっっっごい痛かった。もう、側にいたオータに悪態つきまくるくらいね。多分オータはそれを思ってツッキーを部屋から出したのね~。ね、ドクター?」
「アズサさんの時は、あの冷静なオータが慌てたり、器材を落としたり···それはもう珍しい物を見せて貰ったよ」
そんなに···?
痛みと苦しみの時間を過ごしながら、穏やかに会話を続ける2人を見て···私はこんなに痛いのに!と心の中で毒づいて見る。
だって声になんか出せないよ。
アズサちゃんもこんなに苦しくて痛いのを耐えて、あんなにかわいいリンネちゃんを産んだんだから。
これから押し寄せるであろう痛みがどれだけの物かは分からないけど。
頑張るからね···とお腹に手を当てて、何度も撫でた。