第3章 海原の煌めきをアナタと···
『こんにちは、チカラさん』
縁「やぁ、ツムグさん。今日はお城に用事だったの
かい?」
城下町でお花屋さんを営むチカラさんのお店に立ち寄り、ツインズに飾るテーブルフラワーを注文する。
『今日はお城のお医者様にこの子が元気でいるか診て貰ったんです。それから彼の腕も···』
隣に立つ人にそっと目をやれば、チカラさんもそれに続いて視線を動かした。
縁「そう言えば、腕の具合いはどう?」
月「···別に」
またそうやって···
『チカラさん、以前より···ほんの少しだけなら、動かす事が出来るようになって来たんですよ?』
縁「本当に?!···そっか、そうだよなぁ···それは良かったじゃないかツキシマ!」
人と交わるのが苦手な彼が、こんなにもいろんな人から声を掛けられるようになって。
あんなにも、腕の治療を面倒だと言ってはオータ兄様に説得されていた彼が、文句を言いながらも頑張って通ってて。
これもきっと、この子がいるからなんだろうな···なんてそっとお腹に手を当てながら、密かに思ってみる。
縁「大丈夫?もしかして···痛いとか?!」
『違いますって。何だか、責任重大だな···って』
縁「責任?」
『はい。チカラさんもよくご存知のように、私達の巡り合わせって···いろんな事が重なってて。だけど、今はちゃんとこうして繋がりがあって···新しい命も、授かって···あ、動いた!』
手を当てている部分がポコリと動いて、伝わる振動に感動する。
いつ動いても、何度でも感動はするんだけど···
でもそれが、自分の中に大切な宝物が宿っている証で。
縁「あの、さ?ちょっとだけオレも触っていいかな??」
なんとなく恥ずかしそうに言うチカラさんが可笑しくて、どうぞお好きなだけ···とお腹に手を持って行ってみる。
『アズサちゃんが、いろんな人に撫でて貰うといいんだって言ってましたから。チカラさんみたいに優しくて賢い子が産まれるように、どうぞ撫でて下さい』
縁「え?オレ??···分かった、頑張って撫でるよ」
月「ちょっと。その言い方だと僕が優しくなくて賢くないみたいデショ···なに、そのニヤケ顔」
『別に?』
拗ねるように言うツキシマさんが、この時はなぜか···可愛いと思えてしまった。