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おにぎり

第1章 おにぎり


アイドル科で頑張ってる彼氏の紅郎くんに、毎朝自分のお弁当と一緒に軽食用におにぎりを作るものの、朝だと忙しくて会えないんじゃないかと思って連絡もできないで、そのまま行き場のないおにぎりを持って登校してしまう。

「はぁ…」
「あや。おはようございます」
「菜子ちゃん、おはよう」

登校中、隣のクラスの友達の菜子ちゃんと会って、そのまま学校に向かう。

「菜子ちゃん、今日も部活?」
「はい。今年は頑張り屋さんの新入生も入ってやり甲斐が増えてます」
「へぇ…あ、そうだ。これ、作りすぎちゃったんだけどよかったら部活の足しにしてくれないかな?」
「よろしいのですか? あやのお料理はいつも美味しいので大歓迎です」
「うん。残っちゃうより食べてもらえる方が嬉しいから」

菜子ちゃんに、紅郎くんに作ったおにぎりが入ったランチバックを渡すと笑顔で受け取ってくれた。菜子ちゃんの嬉しそうな笑顔を見るたびに申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。でも、菜子ちゃんもいつも食べたら感想を教えてくれて、それが嬉しくて渡してしまうのも事実なんだよなぁ……
本当は紅郎くんに渡せて、美味しいって言ってもらいたい、だなんて我儘だもんね。いつもアイドルの仕事やお家のことで忙しいし、連絡できるだけでも嬉しいし…たまに帰り道で会えた時や妹さんと3人でお出かけするのも楽しいから…これ以上我儘は言えない。

「どうかされました?」
「ううん、なんでもないよ。あ、今日は副会長さん、部活に来られるといいね」
「蓮巳さんも生徒会やユニットでお忙しいですからね」

お話しているうちに学校に近づいていた。
気持ちを切り替えて今日も1日頑張らないと。夕方からバイトも入っているし、気合いを入れないと。

「そういえば、今日もアルバイトですか?」
「うん。夕方からバイトなんだ」
「大変じゃないですか?」
「でも、家にいても暇だから」
「あまりご無理はなさらないでくださいね」
「うん。ありがとう」

学校に着いて、教室の前で別れると私は自分の教室に入った。

「……食べづらいですね」
「菜子、おはよう」
「おはようございます」

私は菜子ちゃんが困ったような笑みを浮かべてるのを知らなかった。
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