第2章 HONEY & LOVER
「こんなところまで来て、何やってんだ?」
俺の方に振り返った2人。。
「檜山か。お前が話を聞いてくれないから、直談判に来ただけだ。」
「直談判?」
「たった1度、お茶してくれるだけいいんだ。それで諦める。彼女なら優しいから、俺たちの話を聞いてくれる筈だ。」
何処から、そんな自信が出てくるのやら。足立の方を見ようとした時、いきなり足立が神妙な顔で発言してきた。
「悪い……檜山には申し訳無いことをしていると思う。でも、1度だけでいいんだ。そうしたら、彼女のこと諦める。約束する。」
前回のあの悪態をついた足立とは、真逆の印象を受ける様な態度に俺は驚いた。
「足立もこう言っている。彼女は素晴らしい人だ。だから……っ!!?」
「煩いっ!!だから何だ?俺は絶対に認めない。」
小林の背後で、ニヤリとする足立。小林からは、足立の表情は見えていない様だ。
「ひ、檜山の気持ちは分かる。でも、そこをどうか同じ人を好きになったよしみで何とか納めてくれよ。」
「断る。」
「どうか、この通りだ!!」
小林が、額が膝に付くくらいに俺に頭を下げた。そして、それを見た足立はニヤニヤしている。
小林の人の良さを使って、足立は……。マジでムカつく。
が、その時、気の抜けるような声。
「えっと…小林くんだっけ?ちょっといいかな。見て欲しいものがあるんだ」
芹の一声に、意味がわからないなりにも頷き芹に近付いた。芹は、委員長にスマホの画面を見せている。
ご丁寧にイヤホン付きだからか、音声があっても聞こえてこない。そして、委員長の顔が更に意味がわからないと言うかの表情を浮かべては足立に向き直った。
「なぁ…お前は何で、ニヤニヤしてんだ?」
芹のスマホに流れていた動画は、足立をピンポイントにしたものだった。
「あ~、ご丁寧に。ま、この際どうでもいいか。なぁ、小林。俺さぁ…お前のこと、死ぬほど嫌いって言ったらどうする?」
「……知ってる。」
「ハッ?知ってて、今までつるんでたのか。って、いつから知ってた?」
委員長は、何でもないようにキッパリと告げた。
「三年前。」
足立の顔が苦渋に歪んだ瞬間だった。
その後、足立からの怒声が響き渡った。近所迷惑になるほどの激高ぶりに、俺たちはその思いがどれ程根深いものだったのか知ることとなった。