第2章 HONEY & LOVER
誹謗中傷……噂に+αされた。ったく、何だよ……俺が横恋慕って。ま、誹謗中傷の類いが俺だけって、絶対作為的だよな。
でも……俺とすれば、そんな噂なんかどうでもいい。あいつが誹謗中傷の的になってさえいないのなら。だから、俺は気にしなかった。
今日は、あいつとランチの約束。二人でラウンジで食事をしていると、一部からヒソヒソ声が聞こえてきた。
俺を罵る声だ。でも、そんなものでイチイチ気にするのも馬鹿らしい。だが、目の前にいるあいつは違っていた。
「おいっ…………何って顔してんだ」
「だ、だって!!さ、朔良くんは気にならないの?あんな嘘ばっかりの噂を信じられて」
「あぁ、どうでもいい。俺は、お前さえいればいいんだ。だから、そんな泣きそうな顔するな。な?」
あいつを宥めては、早々にラウンジを出る。あいつは、あれから黙ったままだ。
「お前…………気にし過ぎ。俺がどうでもいいって言ってんだから、気にするな」
「だ、だって……好きな人があんな風に誤解受けてて、気にするなって言われて、はいそうですかなんて言えるわけない!!」
珍しく大きな声で憤慨するあいつに、つい笑みが零れる。こいつ、自分が言った言葉の意味分かってねぇよな……。
「な、何で笑うの?あんな好き勝手言われて、腹はたたないの?」
「言っただろ。俺は、お前さえ本当のことを知っていればいい。でも……ありがとな?俺の為に怒ってくれて……」
少し泣きそうなあいつの頭を撫でる。こいつの言葉には裏表がない。だから、俺は好きになった。
「無欲すぎない?」
「俺が?何があってもお前を手離すつもりはないって思うくらい、欲はありまくりだけど?」
「も、もう……。そんな風に言われたら、何も言えないじゃない……」
教室に入れば、興味本位の視線や鋭い視線を向けられる。あいつの視界に入らない様に、直ぐに席をとっては俺へと視界を向けさせる。
端から見れば、ただイチャイチャしているかの様に見えるだろう。俺はこんな時でも、変わらずにあいつにちょっかいを出す。
さっきの様な、眉間に皺を寄せた顔や泣きそうな顔じゃなくて、可愛い笑顔にホッとする。
「朔良くん……何か、嬉しそう?」
「ん?そうか?そうかもな…………こうしてお前が傍にいるから」