第13章 長期合宿前編

ーside赤葦ー


月島が出て行ってから、夜久さんは灰羽のレシーブ練やるって言ったから、３対３になった。
木兎さん、犬岡、俺のチーム対黒尾さん、福永、優希のチーム。
｢あ、どっちとも全学年がいる｣
呟いた優希に黒尾さんが反応する。
｢お、俺もしかしてナイス振り分け？｣
なんでドヤ顔してるんだろ。

そもそも故意にこのチームにしたとしか思えない。
｢黒尾さん、何でこのチーム分けなんですか？｣
｢なんだよ赤葦、不満かよ｣
｢いえ、別に…｣
正直不満しかない。
何で黒尾さんが優希と同じチームで俺が別なのか。

｢赤葦さん、どうしました？｣
黒尾さんを軽く睨んでいると優希が話しかけてきた。
｢いや。優希にトス上げたかったんだけどな｣
｢でも黒尾さんのチームにセッター居ないですもんね｣
残念です。と言う優希に少し違和感を感じる。
｢優希ってセッターも出来るの？｣
｢小さい頃は光ちゃんにトス上げてましたからね｣
成程ね。それならセッターも出来るわけだ。

｢でも上手くないので赤葦さん見て勉強しなきゃ｣
そう言って優希はコートに向かう。
…凄いな。ブランクがあるとは言え、桁外れのセンスと才能があるのに、それでも向上心を忘れない。
俺も負けていられないな。

｢あかーし！始めるぞー！｣
はいはい。と言いながら叫んでる木兎さんの元へ向かった。


ーsideendー



｢本気で良いですかー？｣
おーう！と叫ぶ光ちゃんと、木兎狙ったれ！と言う黒尾さん。
ニヤッと笑って光ちゃん目掛けて思いっきりジャンプサーブを打つと、光ちゃんからノータッチエースを奪う。

｢せめて触れよー｣
｢木兎さんスパイクだけじゃなくてレシーブも練習しないとですね｣
黒尾さんと赤葦さんに責められてる光ちゃんを笑いながら見てると、
｢岡崎凄いな！｣
犬岡くんの目がキラキラしてる。
福永さんも近づいて来て、私の肩をトントンと指で叩くので振り向く。

何か心配されてるみたいだけど…あ、膝のサポーターか。医療用だもんな。
｢大丈夫ですよ。無理しなければ問題ないです｣
福永さんはサポーターを指差す。
｢これは補強してるだけです｣
福永さんがホッとする。
｢心配しないでください｣
私が笑えば福永さんも安心したのか微笑んでくれた。