第5章 IH予選
翌日、IH予選2日目。
横断幕を取り付ける為、1人で2階席へ行った帰り道。
「おはよ優希ちゃん」
後ろから私を呼ぶ声がしたので振り向くと
「あ、おはようございます。及川さん」
及川さんと岩泉さん。
岩泉さんにも挨拶すると、おう。と片手を上げて返してくれる。
「今日は楽しみだね」
及川さんは本当に楽しそうだ。
「あ、ねえ優希ちゃん!今日ウチが勝ったら俺と付き合わない?」
この人は何を言っているんだろう。
隣の岩泉さんに視線で訴えるも、呆れて溜息吐いてる。これはもうダメだ。
「えっと…どういう意味です?何処か行くとかじゃなく…?」
淡い期待を込めて聞いてみるも
「違う違う。コイビトにならない?ってこと」
やっぱりそういう意味でしたか。でも何故私?会ったの1回だけだよね?あ、2回か。でも意味が分からない。
「なりませんけど」
普通に断れば、やっぱりね。って。え、返事わかってるなら何で言ったの?
呆然としていると、あ、岩泉さんが殴った。
「てめぇは何意味わかんねえ事言ってんだ」
うん、ほんとそう。意味わからない。
「悪いな、岡崎。コイツの言ってる事は無視しろ」
「岩ちゃんヒドイっ」
あ、また殴られた。
「あ、大丈夫です。本気じゃないの分かってるんで」
だからもう殴らないであげてください。と岩泉さんに言っていると、
「岩泉さん、及川さん見つかりました?」
と私の後ろから声がした。
おー。と言った岩泉さんの声と同時に振り向くと、英と勇太郎。
「あ、2人ともおはよう」
おはよ。と2人が返してくれると、おら行くぞ。と及川さんを殴る岩泉さん。あ、殴るじゃない。小突く、かな。
「じゃあまたコートで」
と言って皆の元へ戻ろうとした私に、
「優希ちゃん、俺は本気だから。覚えておいて」
さっきまで俯いていた及川さんが真剣な目をしている。
その目に不覚にもドキッとしてしまうが、
「でも、勝つのは烏野ですから」
と挑戦的に笑っておく。
同じ様に笑い返した及川さんは、私の頭にポンっと手を置いた後、岩泉さんと私の横を通り過ぎて、英と勇太郎を連れて歩いて行った。
皆の元へ戻ると、
「優希何してたの?遅かったね」
と言う蛍に、ちょっとね。と返した後、皆の方に向き直って言う。
「今日も、勝ちましょうね」
「「「おうっ!!」」」