第15章 長期合宿後編
「俺ね、小さい頃に出会った女の子にバレーを教えてもらったんだ」
私と一緒だ。私は教えた方だったけど、一緒にバレーしたのは楽しかった。
「その時は結局1ヶ月くらいしか一緒に遊べなかったけど、目をキラキラさせながらバレーボールを追いかけるその子が忘れられなくて、俺はすぐにクラブチームに入ったんだ」
そう。あの時は、お父さんが急に出張行かなきゃいけなくなって、お母さんもついて行くからって、夏休みの間、光ちゃんの家にお世話になってたんだ。…って…え?
「次にその子を見かけたのは雑誌でだったし、びっくりしたよ」
…え、ちょっと待って。
「その子は覚えてるかわからなくても、俺はその子とした約束をずっと覚えてるんだ」
その約束って…
「大きくなったら俺のトスを打ってね、って」
それって…やっぱり…
「約束、守れて良かったよ」
そう言って優しく微笑む赤葦さん。
やっぱり…赤葦さんの名前って…
「け、いじ…くん…?」
「うん、そう。赤葦京治。ずっと優希に会いたかった」
その言葉に、私の目から涙が溢れた。
「…わ、たし…も、会いたく、って…ずっと…」
すると、突然目の前が真っ暗になった。
頭の後ろと背中に回った腕の感触、すぐ近くで聞こえる心臓の音…あ、抱きしめられてるんだ、私。
「…好きだよ、優希」
耳元で囁かれた声に、ピクっと体が反応する。
それよりも…え、今なんて…
「子供だったけど…一目惚れっていうのかな、あの頃から俺はずっと優希が好きなんだ」
うそ…私、は…
「俺と付き合ってください」
…私も、ずっと…
ずっと…好きだったんだ。
やっと、自分の気持ちを確信した。
「…はい」
赤葦さんの背中に手を回して小さく答えると、赤葦さんは一瞬ビクッとした後、さらにキツく私を抱きしめた。
…少し苦しい。
だけど、それが心地良い。