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【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集

第7章 卒業式 (月島 蛍)


「中学の時は…凄く嬉しかったよ。今も大切に持ってる…し。」

何だか恥ずかしくて振り返らずにそう告げると、肩にズシっと蛍の重さが加わった。

「なんだ…そんな事なら、和奏の為に第二ボタン隠しておけば良かった。…ごめんね。」

蛍が肩越しに、私の胸の前あたりに腕を持ってきて抱きしめる。

「ううん。私は…高校の3年間でもっと素敵な物をたくさん蛍から貰ったから。だから…私こそ、わがまま言ってごめんね。」

蛍の温度が背中から伝わってくる。
この温もりがあるだけで、十分幸せだってわかってる。

「僕の方が和奏から色んなものを貰ったよ。それに、第二ボタンよりも貰って欲しい物があるんだけど。」

貰って欲しい物?

蛍の右手が一度後ろに消えていって、再び目の前に差し出されるまで何も言えずに見ていた。
まるでスローモーションのように私の時間が止まっていた。

まさか、目の前にケースに入った指輪が差し出されるなんて思ってもいなかったから。

「これ…。」

「婚約指輪。本当はすぐにでも月島和奏になって欲しいけど…、親のお金で大学に行かせて貰う身だし、そんな無責任な事は出来ないから。4年後ちゃんと就職して責任ってやつを1人で背負えるようになったら…結婚して欲しい。」

ドラマなどでしか見た事ないようなダイアモンドのついた指輪を前に、涙が溢れる。

今日は何て涙腺の緩い日だろう。

「け…い…。」

「何?言っておくけど、異論は認めないからね。」

異論なんて、あるはずがない。

「ありがとう、蛍。」

見上げるように振り向けば、優しい顔でこちらを見ている蛍と目が合う。

「まさか…体育館で渡す事になるとは思わなかった。けど…思ってたより悪くないかもね。はめてあげる。左手出して。」

左手を顔の前まで持ってくると、蛍がゆっくりと薬指に指輪をはめてくれた。

「うわぁ…。」

左手の薬指でキラキラ光るダイアモンド。
まるで何かのおとぎ話のようだ。

「本当はもっといいやつ買ってあげた買ったんだけど…どうしても卒業のタイミングで渡したくて。」

「ううん。これで十分だよ!凄く…凄く嬉しい。」

ギュッと右手で左手と指輪を覆って、胸の前に持ってくる。
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