• テキストサイズ

【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集

第7章 卒業式 (月島 蛍)


「それ、ずっと外さないで着けてなよ。東京に行ったら、学校も別々だし…虫除け的な意味もあるんだから。」

「虫除けって…その為に今日渡したの?私が進学するの、女子しかいない短大なんだけど…。それを言うなら、蛍だって…やっぱり同じ東京って言っても毎日は会えないだろうし、私だって心配だよ。」

大学、サークル、バイト…きっとどんどん今までと違う世界が広がって行く。

世界が広がった分だけ、私達2人の時間が削られて行く。

それを嫌だと言うのは、酷く我儘な気がしていた。

「その事…なんだけどさ。卒業式に合わせて、和奏のご両親って帰国してるんだよね?」

父の仕事の都合で、普段は海外で生活している両親。
幼馴染の蛍も、もちろん両親の事はよく知っている。

私の卒業式に合わせて帰国し、2週間日本に滞在する予定だ。
その間に、両親と東京へ行き、次の住まいを探す予定でもあった。

「うん。式にも来てたけど?」

「出来れば、改めてご挨拶したいんだ。それで、婚約の事もちゃんと認めて貰いたい。」

「え…あっ…うん。」

婚約は2人だけの事じゃない。
両親へ挨拶したいと言う蛍に、私の中で婚約や結婚と言った言葉が急にリアルな意味を持ち出した。

もう一度、左手の薬指にはまる指輪を見る。

おとぎ話なんかじゃないんだ…。

「で…、僕としては春から東京で和奏と一緒に暮らせれば…って思ってる。和奏と和奏のご両親が許してくれるなら…だけど。」

蛍と…一緒に暮らす…。

今までも、一人暮らしの私の家に蛍が泊まる事はよくあったけど…重みが全然違う。

結婚を前提にした同棲なんだから。

勢い余って新婚の妄想までしてしまい、身体中の温度が一気に上がる。

「和奏は…どう思う?」

蛍の言葉に、身体をくるりと蛍の方に向ける。

「私も…蛍と一緒に暮らしたい。」

蛍のお嫁さんになる事は、私の小さな頃からの夢だった。

「和奏、愛してる。」

蛍の言葉を合図に、ゆっくりと唇を重ねると、また涙が流れる。
幸せな時って泣けるんだ…なんて、思ってしまう。

高校に入学してから叶った私の初恋が、卒業とともに蕾となって、ゆっくり花開こうとしている。
この先、雨や風の日もあるだろうけど…満開となり、実が実る、その日まで。ずっと蛍の隣で…。

end.
/ 66ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp