【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第5章 愚問 (影山 飛雄)
だから、デートじゃない…と言いかけた時に、飛雄が先に口を開いた。
「和奏は俺の彼女です。他の男とデートとかする奴じゃありません。だから、及川さんの勘違いです。」
飛雄の迷いのない言葉にふいに涙が溢れそうになる。
私…こんなにしっかり飛雄に思われてるのに…何を不安に思っていたんだろう。
「あのね、飛雄ちゃん。俺の彼女だって偉そうに言う前に誕生日忘れて不安にさせたりすんなよ。そんなんだから、和奏に愛想尽かされるんだよ。勉強になってよかったね。」
今度は隣で平然と言ってのける及川さんに驚く番だ。
私、少し怒ってはいたけど、別に愛想尽かしたり、飛雄を嫌いになった訳ではない。
そして、そんな事は及川さんもわかってるはずだ。
いつもの…悪ふざけか…。
「俺、和奏に聞かれてからバレーと和奏のどっちが好きか考えました。」
私が及川さんを思い切り殴ってやろうと思ったのと同じタイミングで、飛雄が口を開いたので、私も及川さんも言葉の続きを待つ。
「最初は何て質問してんだよって、イラっとしたりもしました。でも、今日部活してても和奏の事ばっかり考えて、全然バレーに集中出来ない俺が居て…。バレーは大切です。でも、和奏も居ないと困るんです。だから…和奏を返して下さい。」
及川さんに向かって頭を下げる飛雄に、先ほど堪えた涙が今度こそ溢れた。
私、何を考えていたんだろう。
バレーボールを夢中で追い掛けてる飛雄の事を好きになったのに。
本当に…馬鹿だ。
「うーん。どうしようかなぁ。飛雄が、及川さんにはどうしても敵いません。って言っ…痛ったー!!ちょ、岩ちゃん。今、本気で殴ったでしょ。」
隣で悪ふざけを続ける及川さんを、傍観を決め込んでいた岩泉さんが殴って、私から引き剥がし引きずって行く。
「うるせぇ。クソ川!どっからどう見ても、お前邪魔者だろうが。」
「なっ、及川さんが邪魔とかありえないから。ってか、クソ川って呼ぶのやめてよ。」
2人の話し声が段々と遠ざかって行き、その場に飛雄と2人残される。
残されると言っても、ここは学校の校門なので周りにはちらほらこちらを見ている生徒も居る。
「あの…飛雄。」
ここじゃ恥ずかしいから場所を移そう。そう言おうとした私を飛雄が突然抱き締めた。