【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第5章 愚問 (影山 飛雄)
「駅前のケーキ屋にしようか。あそこならこの時間でもイートイン開いてるし。」
及川さんがワザとじゃないかと思うくらい大きな声で言ったから、完全に周りに居た皆に誤解されていると思う。
部活終わりの校門周辺はバレー部以外にもたくさんの生徒がいるっていうのに…。
現に岩泉さんが心配して声を掛けて来てくれた。
「おい皐月、大丈夫か?また及川のやつが無理矢理言ってるだけなら、無視しろよ。」
いつも及川さんに絡まれている私を気に掛けてくれる…岩泉さんは本当にいい先輩だ。
でも…。と心の中で唱えて岩泉さんにぺこりと頭を下げる。
「ありがとうございます。でも、今日に限っては無理矢理じゃないので大丈夫です!」
「は!?」
いつも通り、迷惑してます。助けて下さい。という返事を予想してたのだろう岩泉さんが驚きの声をあげる。
なんだったら、既に及川さんに怒鳴りそうな勢いだったから、拍子抜けといった様子だ。
「ちょっと岩ちゃん、俺が無理矢理誘ったの前提って酷くない?」
「あ?いつもそうだろうが!」
「今日はちゃんとデートに誘ったら、和奏から行くって言ったんだよ。ねぇ?」
ニコニコと私の肩を抱き寄せてくる及川さんに、デートじゃありませんとツッコミを入れようとして、一瞬時間が止まる。
向かいに居る岩泉さんの肩越し、校門の外に居るはずのない人物を見つけたからだ。
「飛雄…?」
間違いないだろう。
烏野の真っ黒なジャージを着て、いつもみたいにブスっと不機嫌な顔で立っていた飛雄がグイグイとこちらに近付いてくる。
「飛雄ちゃんじゃん。わざわざ部活帰りに来たの?」
飛雄の存在に気付いた及川さんがヒラヒラと手を振る。
岩泉さんはその言葉でやっと飛雄の存在に気付いたようだ。
「及川さん、和奏を離して下さい。」
私の方など全く見ずに、及川さんだけをジッと見つめて言う飛雄の声は真剣そのものだ。
「え?何で?和奏は今から及川さんとお誕生日デートだから、また別の日に出直しなよ。」
及川さんは面白がっているのだろう。
私の肩に回った手にギュッと力が込められる。