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愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第4章 愛の唄 Ⅲ



 天草は、ダ・ヴィンチの大魔術から命辛々逃げたものの、自分で行使した魔術によって飛ばされた場所も、時代も分からないという、何とも不格好な事態に陥ってしまった。おまけに、霊基の破損は甚大。受肉した肉体も、聖杯の泥による影響と、魔力不足など様々な理由に依りオーバーヒートして、崩壊寸前。自力ではその場から少しも動けない状態にまで、天草は落ちぶれていた。自業自得と言えば、それ以上にぴったりとくる言葉が無い。しかし、天草はそのような状態であっても、その鋼のような精神で己を支えていた。―――――このまま消えてなるものか。聖杯を求め、受肉まで果たして、聖杯へあと僅かというところまで迫ったのだ。このまま己の夢を諦めるなどという選択肢は、天草には無い。

 動かない肉体で、それでも天草は、冷静に己の状況を分析する。

 ―――――恐らく、ここは日本だ。人通りこそ少ないので分かり辛いが、先程チラリと見えた看板の文字が、漢字仮名交じりだった。漢字と仮名が混在しながら並ぶ言語など、天草の知識の中では、日本語を除いて存在しない。時代も、以前に己が受肉した時と同じか、少し経過したぐらいだろう。大気中の魔力濃度や質で、概ね把握できる。大まかな時代さえわかれば、あとは適応できるだろうと考えた。

 しかし、問題はそこではない。自らの両腕(宝具)の機能が損壊している点である。全ての機能が無くなっているとは言えないが、魔術が思うように行使しづらい。両腕(宝具)機能不全の原因としては、聖杯の泥に侵されていながらも、無理に受肉した結果だろうと推測する。或いは、レイシフトの魔術理論を自らの宝具を利用して解析し、汚染された聖杯の魔力を燃料として転移を実行させた所為だろうかとも考える。それにしても、魔力残量も残り僅かである。浄化系の魔術も、うまく作用しない。このまま、肉体の死を迎えるのか――――――そう思った瞬間に、天草は、“彼女”と出逢った。

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