愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第3章 愛の唄 Ⅱ
そう言って、彼は私の左手を取って、何やらつぶやいた。一瞬だけ、彼の手が光ったような気がして、その後に私の指先を見ると、傷なんて最初からなかったようになっていた。
「どうですか?」
そう言って、彼はにっこりと微笑んだ。いやいやいや、一体何がどうなっているのか。これが、“天草四郎”の、奇跡なのか……?
「やっぱり、“天草四郎”、なの……?」
「最初からそう言っているではありませんか。」
怒るでもなく、彼は至極穏やかに、そう言って微笑んだ。私は生まれてこのかた、聖人君子なんてものに出会ったとはないけれど、目の前の彼がそうではないのかと思えた。聖人。そう呼ばれるにふさわしいだけの気品と穏やかさと神秘的な雰囲気。それが、目の前の彼から感じられるような気がして。
「“天草、四郎”、さん……?」
私がそう呼ぶと、彼はこれ以上ないくらいに、穏やかに、にこりと笑って―――――――