• テキストサイズ

愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】

第3章 愛の唄 Ⅱ



 時刻は夜。あと数時間と経たないうちに、日付も変わろうという頃合いだった。
「……、はぁ……、はぁ……。」
 手酷い傷を負った天草は、何処とも知れぬ路地にいた。酷い発熱だった。聖杯の泥に浸食された結果である。浄化系・回復系の魔術を行使し、抵抗し続けているが、思うように効果が発揮されない。このままでは、せっかく受肉した肉体も、時間と共に衰弱していくこと必至だ。せめて、体を休められる場所があれば良いが、今いる場所が何処かすら、天草には分からない。
 それもそのはずである。天草は、ダ・ヴィンチの魔術が直撃するその瞬間に、全ての令呪ストックを無理矢理魔力へ変換し、単独で強行転移を実行したのだから。原理は、カルデアのレイシフトと同じである。しかし、本家のそれと異なるのは、どこにどう転移するのか、その指定が全くできないということである。そのおかげで、天草は自らの切り札とも言える令呪を全て失った。しかも、聖杯の泥に侵されてしまったため、両腕(宝具)の機能も、幾らか損傷してしまっている。

「……っ、はぁ……、はぁ……。」
 傷は容赦なく痛む。荒い呼吸だけを、繰り返す。自分がもたれかかっているところは、硬い壁なのだということ、その壁と壁の間に自分がいるということから、それなりの文化レベルのある時代だということは、すぐに察しがついた。そしておそらく、日本であろうということも。

 受肉しているため、魔力切れを起こしたところで、肉体が消滅することはない。しかしそれは同時に、どんなに肉体が苦痛を感じても、その苦痛から逃れられないことも意味する。


「……っ、はぁ……、はぁ……。ぁ、ぅ……。」
 天草の意識は、ずっと朦朧としている。頬に、冷たさ感じる。
 雨だった。
 雨は数分の間だけ、ぽつぽつと降り、あとは大雨に変わった。天気予報では、この雨は2、3日ほど続くとのことらしい。

/ 117ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp