愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第2章 愛の唄 Ⅰ
「ぁ……!?」
天草は、思わず息を呑んだ。
「―――――――ごめん、四郎。」
少女は、天草に対して、“ガンド”を打ち放った。無論、聖杯と接続しているサーヴァント相手に、それほどの効力は無い。いくらカルデアからバックアップを受けたとして、三流以下の魔術師が放てる呪いなど、サーヴァントにすれば数秒程度の効果しかない。しかし、その数秒が、運命を左右することもある。それが、まさしく今だった。
「流石だ、マスター。」
ダ・ヴィンチは、静かな声で呟き、魔術式を展開させる。展開させる魔術は、たったひとつ。
「カルデア総員! 全力のバックアップを!!!! 強制プログラム! 展開!!!!!!!!」
ダ・ヴィンチが叫ぶ。
周囲の空間が歪むほどに、魔力がダ・ヴィンチへと収束する。オーバーロードなどという言葉では生易しいほどの、強烈な魔力。
「いっ……、けえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
ダ・ヴィンチが、天草に対して、大魔術を行使する。
「霊基、変換……!!!!」
つまりは、サーヴァントを“座に還す”術式だった。通常、双方の同意が無ければ行使できない魔術式だが、天才・レオナルド・ダ・ヴィンチは、その圧倒的な実力と、カルデアからの全面バックアップを以ってして、不可能を行使してみせたのだった。こうなってしまえば、ルーラーであろうが受肉していようが、サーヴァントであれば逃れることができない。
「ぁ、ああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
天草の断末魔が響き、やがてぷっつりと途絶える。
後に、カルデアから追加の戦力が送り込まれ、聖杯は速やかに破壊された。
天草は、“この世界”から、消えることとなった。
あとには、天草のマスターであった少女が、残されていた。