愛の唄 【Fate/GrandOrder 天草四郎】
第8章 愛の唄 Ⅶ
「――――四郎。私は貴方を、愛しています。」
「――――。」
ピクリと、天草の肩が動いた気がする。それでも私は、気にせずに続ける。
「私はもう、本当は貴方に傷ついてほしくないです。もう、……充分だと、そう思います。でも、四郎はもう止まらないのも、知ってる。だから、覚えていて。」
「……。」
天草は、動かないし、何も言わない。
「貴方を愛した“人間”がいたと。貴方に傷ついてほしくないと願う“人間”がいたと、覚えておいて。……、それが。……、それ、が……!」
最後の方は、涙が溢れて、上手く言葉にならなかった。それでも、私は続ける。
「それが……、私の願い事です……! ……っ、ぁ……。しろ、う……。叶えて……!!」
絞り出すように、私は私の言葉を、吐き出して、ぶつける。泣き顔の私は、そのまま俯くしかなかった。
コツコツと、私へ近づいてくる足音が聞こえる。私はもう、俯き続けるしかなかった。
「―――――。」
私の両頬を、温かな体温が包む。
「――――――。」
そして、唇に温かい、優しい感触。それが、天草の唇だと分かる頃には、既にそれは離れていた。
「―――――ありがとう、立香。その願い、この天草四郎時貞が、確かに聴き入れた。」
その声は、私の魂を震わせるのに、充分だった。
……顔を上げると、天草の瞳は、微かに、それでも確かに潤んでいた。
「それでは、さようなら。」
「―――――四郎……。四郎……!」
万感の思いを込めて、彼の名を呼ぶ。