第1章 ハイキュー!!音駒
「勝手にしろって言ったじゃないですかあ!」
「ツクルくん酷い、レーヴォチカがかわいそうよ!」
「責任はとらねーとも言った筈だ。ってことで、この話は終了〜……あ」
立ち上がろうとして、右腕が不自由なままなことを思い出す。
言ったところで離してくれないんだろうなぁ、機嫌損ねちゃったし。
しょうがねえ…腹をくくり、不本意ながら結果的にフラれてはいるけど女の子の相手に慣れている幼馴染みの真似をすることにした。
「なあ、リエーフ姉…下の名前は?灰羽なに?」
「筑流さん?」
「アリサよ」
「じゃあアリサ、ちょい耳貸して」
「呼び捨て!?」
「なぁに?」
大型にゃんこ、ミャーミャーうるせえ。
長い髪をかき上げて、聞く準備をしてくれたリエーフ姉に顔を近づけると、声がもれにくいよう左手を添えてその耳元へ囁いた。
「少しでも…………………………と思ってくれるなら、手ぇ離して?」
言われた内容に戸惑い、弟であるリエーフに視線を送るアリサさん。
一種の賭けだったけど即断されなかったってことは、もしかして上手くいくんじゃね?
もう一押ししてみようと、さらに追加で囁く。
「オレとしては、あんたに……てほしくねえんだけど」
至近距離でオレの顔を映す、日本では珍しい色の瞳をじっと見つめて待つ。
恥ずかしそうに瞼を少し伏せ、一瞬迷うようにまたリエーフを見てからアリサさんは、ずっとつかんでいたオレの右腕を解放してくれた。
…っし、勝った。たまには鉄朗も役に立つじゃねーか、さすがは音駒高校だけで元カノが五人もいる男だ。
「ね、姉ちゃん…?」
リエーフの声に俯いてしまうアリサさんの頭を、くしゃっと優しく撫でる。
「ありがとう」
お礼を言って笑いかけたら、赤い顔でモジモジしはじめた。
いつもこんな感じだったら可愛いのに…なんで変態気質の方が通常運転なんだ、もったいねぇ…。
「さてと、帰るとすっかなー」
「筑流さん、待ってください」
立ち上がってバッグを背負ったところで、リエーフが立ち塞がる。
あ、そうだった、忘れるところだった。
「リエーフ」
「なんですか」
「スマホ返せ」
そういや、アイツらさすがにライン気づいてくれてもよくね?どこで何してんだ、いったい。
「嫌っス」