第1章 ハイキュー!!音駒
「お前、いい加減にしねーと本気で怒るぞ」
「そ、それでも嫌だっ…姉ちゃんになに言ったんですか?」
ビクつきながらなに言ってんだか…と、いつもなら思うところだが。
もしかして、姉ちゃんの心配してんのか?シスコンだしな。
「心配しなくても変なことはなにも言ってねーし、脅してもねぇから安心しろ」
「じゃあなんで赤い顔でうっとり筑流さんのこと見てんですか?」
「知らねー」
「嘘だっ、絶対なんか口説き文句でも囁いたんだ!俺には言ってくれたことねえのに!!」
「アホか、バカか」
「酷いっ!」
違った。姉を心配するかわいい弟とかいう美談なんかじゃ全然なかった。
オレより軽く15cmは高い身長を見上げながら目の前まで歩くと、ネクタイをグッと引っ張り近づいた顔の横で小さな呟きをこぼす。
「本気で………………なら、……………………………してから言いに来い」
すぐには言われたことが理解できなかったのか、都合よく隙だらけなリエーフの制服ポケットからスマホを取り返す。
……あれ?既読にはなってるけど、クロも研磨くんも夜久からも何も反応がない。
ガチ無視とか泣きたくなるんだけど……ってか、ん?あっるぇー…もしかしてもしかしなくても……。
よし、とりあえず鉄朗は絞める。比喩じゃなくてチョークスリーパーかけてやる。
「…筑流さん…今のって…マジで?」
「さあな?…まぁでも、お前がそれ実行するって言うなら考えてやらなくもねーよ」
「えっ…」
「じゃあな。明日の朝練遅れんなよ、レーヴォチカ」
「っ………マジで!!!?」
うるさく叫ぶリエーフを背後に放置して、レジで三人分の会計を済ませる。
そのまま真っ直ぐ出入り口まで歩き、扉を開くと背の高い観葉植物をゆっくり振り返った。
「かくれんぼは終わりにして帰ろうか、鉄朗クン」