第1章 ハイキュー!!音駒
「だって…だって…筑流さんは女好きだから他の男には興味ないって安心してたのにっ、まさか研磨さんや夜久さんに手を出してたなんて!ショックで泣きそう!」
「手なんて出してねーし!女の子は好きだけど女好きだなんて外聞悪い言い方されるほど女好きじゃなければ男好きでもねえよ!」
「ほら泣かないでレーヴォチカ、勘違いみたいよ。ツクルくんも大丈夫?二人とも少し落ちつこう?ね」
そのにっこり笑顔はかわいいんだが、リエーフ姉。
落ちつけない原因のひとつはアンタだってことに気づいてくれ。
頭を冷やそうと、溶けたアイスをぐるぐるかき混ぜて一気にクリームソーダを飲んでいく。
ズズー…ズゴゴ…うるさい音を立ててメロンソーダは消え去った。
グラスに残るは溶けたアイスの泡と氷、それから…。
「おいリエーフ」
「……なんスか」
「サクランボ好き?」
「フルーツは全部嫌いじゃないです」
「ふーん…じゃあ、口開けてみ?」
「…なんで?」
「いいから口開けろって、悪いようにはしねーよ」
「なんスか、その悪役っぽい台詞。嫌な予感しかしねぇ…」
「ったく、うるせぇヤツだなー…リエーフ姉、ちょい右腕離して」
「いや」
こっちもか。
利き腕使えないと不便なんだけど、実力行使できねんだけど…しょうがない別のやり方でいくか。
自由な左手の指先で赤いサクランボの茎をつまみ、ジト目で警戒してくるリエーフの口元へ持っていく。
「レーヴォチカ」
「っ!」
おそらく家族だけが使っているであろう、今日はじめて知った愛称を呼ぶ。
驚きにぽかんと間抜けな顔をさらしたリエーフの、半開きの口にサクランボを突っ込もうとするが、狙いが定まらなくてうまく入らない。
「レーヴォチカ、あーん」
もう一度ゆっくり呼んでやると素直に口を大きく開けたので、ぽいっとサクランボを放り込んだ。
もぐもぐする様を見ながら指をおしぼりで拭い、テーブルに肘をついて顎をのせる。
「種と茎はだせよー?」
念の為に注意すると、空になったグラスの中に種と結ばれた茎がペッと出される。
なんかさらっと器用なことしてるみたいだけど気にしない、突っ込まない。