第1章 ハイキュー!!音駒
「ほぉ…どこが間違ってんのか言ってみろ」
「全部」
二人の会話にドキドキ嬉しい言葉を期待して見守りたくなったが、あんまり突つくと研磨くんの機嫌が急降下しちゃうので、ここら辺が潮時だとクロの後頭部を素早くひっぱたく。
パンッ!
「あ、すげえ良い音した」
「ぷっ…」
…研磨くんが笑った!
クロの後頭部ぐっじょぶ。
またよろしく頼む。
「…なんで叩くんだ、俺悪くねえよな」
「今のはオレが悪かった、しかし尊い犠牲ってヤツだ許せ」
研磨くんのご機嫌とるの大変なんだよ。
今日はもうアップルパイじゃ釣れねーし、新作ゲームを貢げるほどの余裕が財布にない。
さっき店で金使ったばっかだしなぁ……カフェの飲み物ってバカ高い、学生は自販機かコンビニのペットボトルで充分だ。もしくはファーストフード。
「なーにが尊い犠牲だ」
「まぁまぁ…今日はありがとな、クロ」
ちびっこだった昔からずっと、オレより上にあり続けるクロの頭に手を伸ばして、さっき叩いてしまった場所を撫でる。
心配してくれてありがとう。
そんな気持ちを込めれば、自然と手つきは優しくなり口元がゆるんだ。
「……誤魔化すんじゃねえよ」
「あー、ごめんごめん」
ぼそっと言ってクロは顔を背ける。
一見、不機嫌そうに見えるけどこれは違うな。
まーったく、素直じゃねんだから。
「……クロ、気持ち悪いから照れないで」
オレがあえて触れなかったところを研磨くんがズバッと切り込んだ。
「気持ち悪いとはなんだっ、あと照れてねえからな」
「なにそれ…ツンデレのつもりならヤメテ…」
「け、研磨くん、それくらいで止めてやれって」
「……ツクルもだよ」
「え」
「クロに素直に優しくするとか……今日はなんなの?二人して珍しいことしないで」
「……」
「……」
「明日、軽い異常気象どころか災害や人災でも起きたらどうする気?」
「いくらなんでも、それはねえだろ。俺たちを何だと思ってんだ」
「そうだよ研磨くん、オレとクロ程度にそんな影響力ありえねーから」