第1章 猫と団長と伝言ゲーム
険しい顔で見つめる彼、エルヴィン・スミスの目の前には開封済みの三通の招待状。
質素なものから豪奢なものまで、それらは内容こそ異なるがいずれもある程度の役職の者の出席を促している。
それ自体は問題ない。
困っているのは記されている日時だ。全ての招待状で、同じ日付、同じ時間に来るよう指定されていた。
「……」
差出人はいずれも王都在住…
内容を鑑み、また兵団の今後への影響を考えた際、どれも断るには些か勿体無い。
出来ることならもれなく良い関係を築くべく、全てにおいて出席としたい。
流石にどうしたものかと困っているところ、ノックと同時に団長室の扉が勢いよく開かれた。
「エルヴィン!これ出来たから持ってきたよ」
「ありがとう。君が期限前に提出するとは珍しいな、ハンジ?」
私はやれば出来る子だからね、と得意げに答える気心の知れた部下。
出来れば普段もそのやる気を発揮して欲しいものだ…
と、苦労人の副官を思い浮かべつつ無意識に招待状に目をやる。
「ん?ところでそれ、何だい?そういえば随分と難しい顔をしていたけど」
「あぁ、実はな」