第1章 ショートケーキ(月島)
蛍は昔からあまり自分の話をしない人で。
たとえ何かに落ち込んでいてそれを態度に表したとしても、助けを求めたりはしない人だった。
何かあったことを打ち明けてくれることもなくて、でも、なんとなく蛍が落ち込んでる時期があったのを覚えている。
たしか、小学六年生の時だった。
蛍にどうしたの、なんかあったの、とか聞いて。
それでも答えてくれなくて。
痺れを切らして明洸君に、蛍に何があったのかを問いただしたら、明洸君も苦い顔をするだけで、何も答えてくれなかった。
でも苦い顔をしたってことは、蛍に何かがあったのは知っていて、しかもその内容も知っているようだった。
頑なに教えてくれない明洸君に、もういい、と吐き捨てて。
ぜんっぜん仲良くなかったけど、山口君なら何か知ってるかな、と山口君を呼び出して、話を聞いた。
予想通り、山口君は蛍に何があったかを知っていた。
でも明洸君と同じく、私にそれを話してくれることはなかった。
__なんかやだな。
__私だけ、仲間外れじゃん。
山口君より私の方が蛍との付き合い長いのに。
生まれたときから一緒にいて、なんでも話してたのに。
性別が違うってだけで、こんなにも疎遠になってしまうんだと思った。
面白くなくて、ふて腐れて。
しばらく私もふさぎ込んだ時期があった。