第4章 禁じられた2人
「お!月島に星川さん!おはよ-!星川さんすっげえ久しぶりな気がする!風邪治ったのか!?大丈夫?」
「え、あーうん。もう、治ったよ。だいじょーぶ」
ていうか二人で登校とか、めっずらしくねえ?三年間で初めてみたわ、と朝からうるさいオレンジのチビの後ろには、星川ではない方の、もう一人のマネージャー。谷地仁花。
「月島君と、ひまりちゃん。二人ともおはよう」
星川は下唇を痛々しく噛んで、泣きそうになりながらおはよう、と返した。
朝から失恋相手とその恋敵と。
セットで見れば彼女の危ういメンタルが警鐘を鳴らしていた。
「ひまりちゃん、風邪大丈夫だった?ラインも中々返信してくれないから心配してたよ」
「、、うん。携帯とか、しばらく触れなかったごめん、ね」
「ううん、体調悪かったんだから仕方ないよ-。でも治ったならよかった。今日も無理しなくていいからね?」
「、、うん」
沈黙が続いた。
事情を知っている僕からすればとてつもなく嫌な、沈黙。
星川の顔が、悲しく歪む。
叶わない恋心を持て余した彼女の歪な表情は見ているこっちがしんどくなる。
「ねえ、ひとか、あの、」
谷地さんに何を言うつもり、なのだろう。
今の彼女は、無いとは思うが攻撃的にないかねない部分だってある。ただでさえ精神面は脆い方だ。だから僕は星川と谷地さんの間に割って入ろうとした、その時。
「谷地さーん!今度こっちからボール出して!なるべくネットから離したヤツで頼むな!」
日向の声に邪魔されて、それは叶わなかった。
また星川が悔しそうに唇を噛む。
谷地さん、と呼んだ日向に。
当たり前みたいにそう呼んだ日向に。
どうしようもないくらいの歪な感情を、彼女自身持て余していた。
「、、星川」